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好きだもん…

猛にバンドの練習で遅くなるから先に帰っててくれと言われた日に下駄箱のところで猛を待ってた ビックリさせたかったし喜んでくれると思った でも… 「……帰っててくださいって言ったじゃないッスか…」 「あ、っやでも猛と帰りたかったし!!」 「…っそッスか…」 猛はあんまり喜んでくれなかった ずっとそわそわしてるし握った手もやんわり拒否された なんで…喜んでくれると思ってずっとここで待ってたのに… 猛の顔を見上げても猛は目も合わせてくれなかった そのまま背中を押されて早足で外に連れ出された ………いつもゆっくり帰ってくれるのに… もしかしたらあんまり待ってて欲しくなかったのかな… そう思うと寂しくて猛の顔が見れなかった 「あ、じゃあ、ね…また明日ね…」 「あ、はい…」 そうこうしてるうちに駅について 自分が余計な事をしてしまった気がして早足でホームに向かった いつもは電車が来るぎりぎりまで猛と話してるのに… 猛も喜んでくれると勝手に思いこんでいた自分が恥ずかしかった 次の日 猛はきっといつもみたいにお弁当持ってきてくれて、きっといつもみたいに校舎裏で学たちとみんなで食べるんだと思ってた おれがにんじん食べたくないって言うのをいつもみたいに食べたら明日唐揚げにしてあげますよって言ってくれると思ってた でも猛は教室に迎えに来てくれなかったそのかわりにしずちゃん先輩がおれを訪ねてきた 「健斗くんごめんね~猛学祭の準備が忙しくて今日一緒にご飯食べれないって、これお弁当ね」 「あ、そっか…うん、わかった…」 期待してた分残念だったし心のどこかでホントに学祭の準備?って思ってしまった 「あれ?健斗どうしたの?猛は?」 「あ、今日学祭の準備で来れないって…」 「そっか、じゃあここで食ってもいいか」 「……うん…」 仕方なく椅子に座って弁当を開いた …………おれの嫌いな物…何も入ってない……いつもバランスが悪いって入ってるのに… 猛がいつもと違うのがあからさまで余計悲しくなった やっぱり昨日待ってたの…イヤだったのかな…重いって思われたのかも…… どんどん気持ちが沈み込んでいく 「………ごちそうさま…」 「……健斗、お前なんで唐揚げ残してんだよ?」 「…っや、なんか食欲ない…」 「ほんとや…いっつも嬉しそうに食っとるやん?」 「うん…でも、なんか今日はいいや…」 「…………」 「…しずちゃん先輩のとこに…弁当箱返してくるね…」 そう言って教室を出た 昨日、猛バンドの人たちと一緒にいた… 昨日猛と一緒にいた人たちをぼんやり思い出す みんなおれと違ってカッコいい男子高校生って感じだった そもそも猛がおれの事好きになったのって猛がおれ以外の人を知らなかったからだし… 新しい友達ができておれのこと恋愛感情で好きじゃないって気付いちゃったのかも… もしかしたらバンドの人たちの事好きになっちゃっておれもう邪魔なのかも… じわっと涙が滲んだ グッと涙を拭う ………そんなことないもん… 猛のことを思いだす 学の事を女の子だと思ってやきもち妬いてた猛、告白するときに涙を滲ませながら必死に気持ちを告げてくれた猛、嬉しそうにおれがお弁当食べてるのを眺めてる猛、逆上せたおれをすごい心配してくれた猛、ヤるときもずっとやさしくしてくれた猛… 猛は…猛はおれのこと好きだもん… 自分に言い聞かせるように頭の中で何度も繰り返しながら3年の教室に向かった

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