164 / 1015

11時25分

………11時だ…… 時計をちらっと見ると11時を指している おれはまだ教室にいる 10時45分から休憩を貰ってたけどクラスの人たちに是非もう少しって頼まれたのもあってまだ教室に残っていた …………ライブ…始まったかな… ボーっと時計を眺めながらそんなことを考える 「あれ?コンちゃん時間大丈夫?」 「あ、ホントは休憩時間なんだっけ?」 「ごめんね、俺達引き留めちゃった?」 「あ、ううん、いいの、お…私がいたいだけだから…」 「そっか~」 ………猛も来てほしくないかもしれないし…これ以上猛に迷惑かけたくない……重いとか思われたくない…嫌われたくない…… きゅっとスカートの裾を握った 時計の針が進んで10分になる 15分おきにお客さん交代してるけど全然途切れないな… さっきからいろんな人が来た知ってる先輩も他校生も友達のお兄ちゃんなんかも来た でも同じ学年の人たちのオレが女装で文化祭出るって知ってる人以外誰もおれだって気づかなかった 猛なら…猛ならこんなカッコしててもおれだって気づく…こんなカッコしてなくてもかわいいって言ってくれる… 一回猛のことを考え出すとそれしか考えられなくなった周りの話が頭に入ってこない もう11時20分…ライブも終わりがけだった いまさら行ったって…… 「あーなんか人減ったと思ったら今R'sのライブか~」 体がビクッと跳ねた 「お、コンちゃん知ってるの?」 「え、あ…わかん、ない…」 とっさにそう答えた 「なんか結構有名なこの学校のバンドなんだけどさずっとボーカルがギターボーカルだったんだよね」 「…………」 「でもなんかすっげーやつスカウトしたみたいでいっつも音楽室の窓から綺麗な声漏れてるって女子が騒いでたの」 「…………」 「でも練習中の音楽室には入れないから今日誰がボーカルかわかるってみんな大騒ぎしててさ、絶対イケメンだってみんな注目してんの」 「…………」 「っまオレはコンちゃんの方がいいけどね~」 「おっ、おれっ!!」 「いてっ…」 いてもたってもいられなくなって立ち上がった おれに抱き着こうとした男がおれが座ってた場所に倒れ込むのなんて気にもしなかった 「おれ!!休憩行ってくる!!!」 「あ!!けん…コンちゃん!!」 後ろで女子が叫ぶのも無視して教室から飛び出たさっき25分だった… ライブは30分に終わる… 走りにくいハイヒールでダッシュするけど全然走れない もうっ!!邪魔!! ハイヒールを脱いで手に持って走った やだ、猛がもしも女の子と一緒になっちゃったら…おれのこときらいになっちゃったら…絶対にそんなの嫌だ… 人の多い廊下を裸足で走るのは結構辛かったそれでも止まったりなんかしない いろんな人が俺を見てるけど気にしない 会場になっている体育館が見えた

ともだちにシェアしよう!