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リンゴジュース

健斗のせいで回転が速くなって休憩ももらえんままでだんだん疲れて飽きてきた あー……もうまなとちゅーしたい…今すぐ押し倒したい…… そんな出来もせんしょうもないことを考えてたら教室の入り口が急に騒がしくなった 教室のいるやつの注意がそっちに向くのがわかった まなもそっちを見て首をかしげてる そのうち誰かがすすり泣いてる声が聞こえてきた 誰やろ? 気になったらしくまながそっちに向かって行ったからついて行った 「っひ、ひぅ…ひっく…」 泣き声が近くなってきて 壁ができてるとこの女子に声をかけた 「なに?どないしたん?」 「あ…頬付君…健斗くんが…」 円の中心にいたのは健斗やった せっかくきれいにしてもらった化粧も涙でぐちゃぐちゃにして目を擦って泣いていた 健斗はまなとオレの顔を見たら余計にまなにしがみついて泣き出した 他の奴がどうしたか聞いてもなんも言わんかったらしい まなはさすが幼馴染ちゅうか隣にしゃがんで健斗の背中を摩ってなだめていた とりあえず女子から化粧ポーチ借りて健斗の制服持って教室から連れ出す まなが健斗の背中さすって健斗の手を引いて歩いてたけどいっこうに泣き止まない 猛やろな~… まぁ他はまずないやろ 保健室に使用中の看板を下げてとりあえず健斗を椅子に座らせて服を着替えさせた 化粧落としと濡れタオルで化粧を落としてやる まなが持って来たリンゴジュース(なんでリンゴジュースかまなに聞いたら逆になんでリンゴジュースじゃないんだって顔された)を飲んだら落ち着いたのか静かになってじーっと床を見つめとった オレこういう役やないと思うんやけど… とりあえずはまなに任しとく 「どうしたんだよ」 「…………猛が…」 「猛が?」 「おれの事嫌いになった…」 「…そう言われたのかよ」 「言われてない…でも帰り待ってたら嫌そうにするし…お昼一緒に食べてくれなくなったし、女の子といた…」 声には出さんかったけど笑いそうになった だってまなとオレがケンカ…やないけどそんなんなった時もまなが同じこと言っとった まなもそう思ったらしくって顔が真っ赤になってる 「そんなことないよ、猛は健斗の事好きだよ」 「ちがうもん…猛はおれしか知らなかったからおれの事好きだって勘違いしたんだもん…」 健斗はいじけると幼児帰りするタイプらしい 制服の裾をいじっている 「でも猛になにも言われてないんだからそんなの話してみないと…」 「やだ…」 「なんで?」 「話したらフラれるもん…フラれるのやだもん…」 そう言ってまたぽろぽろ涙を流し始めた 話してフラれ話を持ち掛けられるぐらいなら話さないつもりらしい 「そんないつまでも話さないわけにはいかんやろ?」 「ずっと話さないもん…」 「意地張ってんなや」 「銀!!」 ちょっときつい言い方で言い返したらまなに怒られた あかんあかん…人の事になると関心が湧かなくなるのがオレのダメなとこやわ…まぁ自分にもそこまで関心ないけど… 「しかも、おれが話したくないって言ったから…」 「話しにくいんだ?」 「…………」 健斗はリンゴジュースのパックをすすりながら頷いた その後も健斗はたらたらと同じような事を話した オレはそれに口を出そうとするたびまなに怒られた しばらくすると話しきったのか少し顔色も良くなった健斗が「帰る…」って言って立ち上がった 健斗に続いて保健室から出ようとしたらまなに呼び止められた 「あいつ昔からああなんだよ…聞くだけ話聞いてやったらあとは自分で解決するからへんに口挟まなくていいんだよ」 「ふ~ん…?」 まぁ、おるわな、そう言う奴 とにかく、オレは心配しとらんわけではない 健斗は友達やし猛やって後輩やし? 心配はしている でも猛だってきっと健斗と同じこと思うとるんやろな~…

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