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猛の一番

「R'sのボーカル見た!?1年の吉田君だって!!」 「えっ!?それってあの不良の子でしょ!?」 「そうそう!!でもすっごいカッコいいの!!」 「え~でも怖いって聞いたよ~」 「私もそう思ってたんだけどもう歌ってるのみてファンになっちゃった!!」 ………一番初めに猛のかっこよさに気づいたのはおれだもん… 「R'sのボーカル、吉田君だったなんてね~」 「いが~い、同じクラスだけど吉田君いっつもいないか寝てばっかりだったしとっつきにくいイメージだったから…」 「でも、学祭の準備の時手伝おうか?って私声かけられたー」 「私も私も!!怖くて断っちゃったんだけどさ…」 「でも、クラスで出たゴミとか全部掃除してくれてたし、前も先生の雑用…ほらあの資材運ぶって重いしめんどくさくて誰もやらなかったやつ!!あれも吉田君やってたよ!!」 「実はすごい良い人なんだよ~」 ………猛が優しい良い人だって気づいたのもおれが一番だもん… 「ほら、あの3年の吉田先輩と姉弟なんだって!!」 「なんかすっごい兄弟沢山いて大変なんだって~」 「そうそう!!いっつも弟とかの世話してバイトもして家事もしてるんだって~」 「すごいよね~猛君の料理とか食べてみたーい!!」 ………猛の料理一番初めに食べたのおれだもん… 猛の事猛って呼ばないでよ… 猛はおれの彼氏だもん…まだ…フラれてないから、おれが猛の一番だもん… 猛の事一番好きなのもおれだもん… 今日はあのあとずっと裏方をしてた クラスの人たちもみんな気にかけてくれてみんな優しかった 明日はちゃんと頑張ろう… クラスのみんなにもそう言って1日目を終えた 学校ではどこに行っても猛の話題で持ちきりだった R'sのボーカルが意外な人だって皆大騒ぎ もともとは猛はやる気がなかったのにおれが進めたんだもんな… そう思うと嬉しい2割悲しい8割だった 皆が猛の良さに気付いてくれたのは嬉しい でもそのせいでこんなことになっちゃったのは悲しい… そう思いながらとぼとぼ家に帰った 学にも後でちゃんとメールしとこう…銀にも… そう思って家に帰ってスマホを開くと猛からメールが来てた ………どうしよう…怖い… もし…もし…フラれたら…もしこのメールに別れ話が書いてたら……いやだ… いやなもしもの想像ばっかり出てきて止まらない 自分から遠ざけたくせに、おれが話したくないって言ったのに… ……… おれはそっとスマホを閉じてベットに横になった 知らない…おれはメール見てない…メールが届いてたなんて知らない… 今日は学祭で疲れちゃって帰ってすぐ寝ちゃったんだ…だから知らない…猛からのメールなんて見てない… 明日もおれ、急いでてスマホ忘れちゃうんだ… 急いでたんだからしょうがないよね? だからメールが来たことには気づけない 自分ながらせこい現実逃避だと思う でも俺はそれしか思いつかなかった だって…だって猛に嫌いだなんて…好きじゃないなんていわれたら… そう思うだけでゾッとした しょうがないよ…おれは知らなかったんだもの… ぐるっと部屋を見渡すと昔のまま置いてある絵本の本棚に目が行った 特に何の意味もなくシンデレラを手に取った 昔、好きだったな~でもみんなに男なのにってばかにされたな~… …いいなぁ…シンデレラは魔法でオシャレしてガラスの靴落とすだけで好きな人が見つけてくれるんだもんなぁ… おれも魔法みたいにオシャレして、ホントなら猛もかわいいって言ってくれるはずだったんだけどなぁ… そんな感傷に浸ってる自分がおかしかった そのままベットに体を沈めてしばらくしてやってきた眠気にそのまま身を任せて眠ってしまった

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