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ガラスの靴がなくても

ライブが始まった時先輩の姿は見えなかった 大丈夫先輩はきっと来てくれる… 昨日、覚悟を決めて先輩にメールを送った 「好きです、大好きです 明日12時ライブきっと来てください」 でもそのメールに返信は無かった でも…それでも…オレは先輩を信じてる…先輩は来る… それでも先輩は11時55分になっても来なかった 大丈夫…大丈夫…先輩は来る…来てくれる そんなときに先輩の声が聞こえた気がした もう11時59分になっていた ステージからぐるっと客席を見渡す 証明がまぶしくて見えなくてステージから降りて先輩を探した ステージを降りる時に鈴木先輩にウィンクされた ………先輩…紺庄先輩… 困惑してる人たちをかき分けて先輩を探した 見つける…絶対見つける… また先輩の声がしてそっちを見ると人の間でひょこひょこ揺れる手が見えた あれだ… そのまま人をかき分けて先輩の手を引いて 自分の胸の中に抱き込んだ きゅーっと先輩の顔が歪んで行って目から涙がこぼれていた 先輩がかすれた声で小さくオレの名前を呼んだ そのまま先輩を引き上げて唇を押し付ける みんな見てる…見られてる…… いつもならこんなこと絶対しない…今だってめちゃめちゃ恥ずかしい… 先輩の頭からかつらがずり落ちて、周りが余計ざわついてるのがわかった スポットライトまで当てられてる 鈴木先輩がステージの上でマイクを握っている 「はーい!!そこのアツアツカップルがうちのボーカルの吉田猛君とその彼氏の紺庄君でーす!!二人に盛大な拍手を~!!」 二宮先輩はヒューと口笛を吹いて篠田先輩はステージの下に降りて彼女さんに何か渡して抱き合ってた、早瀬先輩もニコニコ笑って手を叩いてる 周りの人たちから始めは遠慮がちにぱらぱら拍手が起こってそれがだんだん大きくなった 先輩の唇から口を離した 言わないと…聞かないと… 「先輩…」 「…?」 「好きです…」 「うん…」 「大好きです、愛してます…」 「…うん」 「人前で…こんな派手な事…していいって思えるの先輩だけですから…」 「……うん…」 先輩は嬉しそうに笑ってから涙を流した 「先輩は……」 「…?」 「先輩はあれから、オレの事、もっと好きになりました?」 恐る恐る先輩に聞く まだ実はあまり自信がなかった 先輩に告白するときもこうやって目閉じてたな… そしたらいつかのようにふわっとオレの首に先輩が腕を絡めてきた 「…大好きだよ!!!」 わぁっと周りの拍手が大きくなる 恥ずかしかったけど嬉しかった ぎゅうっと先輩がオレの首に抱き着いた 幸せな気持ちでいっぱいだった

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