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文化祭おまけ 怖かったんじゃない
「立てない…」
「へ?」
情けなかった
さっき何かが目の前にいた
なのに銀は見なかったって…
………おばけ…
しかも驚きすぎて腰が抜けてしまって動けなかった
「…こ、こし…抜けた…」
「…………」
銀がにやにやしてる
嫌な予感がした
「しゃあないなぁ…じゃ、オレ先行くから後で治ったら来や」
「っえ、っや、待って!!」
「オレ腹減ってん」
銀が俺から一歩離れたところに立つ
手が届かなくて縋るものがなくて不安だった
こんなとこに一人で残されたら……
サッと血の気が引いた
その時またがさっと音がして怖くて涙が滲む
「ま、まって、まってぇ…」
「まな、そんな声出してどしたん?」
自分でもそう思うほど情けない声が出た
銀がまた一歩離れる
「…置いて、かないで…」
「………よし…」
ほっそい喉から絞り出すような声が出た
銀がにやにや笑いを強くして寄ってくる
手の届く距離に来た瞬間銀にしがみついた
誰かに見られるとかその時は頭が回らなかった
ただ怖かった
「はいはい、大丈夫やって、ほらおぶったるわ」
「…うん…」
おとなしく銀の背中にしがみついとく
まだ物音がしたり背中を撫でられたような気がしたけどギュッと目をつぶって銀の肩に顔を押し付けてしのいだ
……まだかな…
確認したくても怖くて顔があげられなかった
またさっきみたいに目の前になんかいたら今度こそ確実にちびる…
それにしても長い…まだ出ないのかな…
痺れを切らしてちょっとだけ目を開いて銀の肩越しに前を見てみた
「!?」
するともうとっくのとうに外に出てていろんな人に見られてくすくす笑われてた
頭が付いてこない
「ぎ…ぎん…?」
「あ、まな、やっと顔上げたん?」
「なんでおぶってんだよ!!降ろせ!!」
「っわ、まな危ない!!まなが立てないって…」
「降ろせ!!降ろせよ!!」
「わかった、わかったから…」
耐えられなくなって銀の背中を手で押して降りようとした
周りがその様子を見て余計にくすくす笑っている
銀がそっと俺を下ろした
とたんに足に力が入らなくてくてんと座り込む
「ほら、まだ腰ぬけとるやん」
「そんなことない…」
「嘘やん」
「…………」
「ほら、背中乗り」
「………別に怖かったんじゃないからな…」
「はいはい」
そうして結局食堂まで銀におぶって連れて行かれた
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