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5歳の恋心
結局なかなかまなちゃんは見つからなかった
もしかしてホントに誘拐…
走りつかれて足を止めた時だれかがしゃくりあげる声が聞こえた
はっとしてそっちに目をやると関係者以外立ち入り禁止の扉に続く廊下の壁際にある自販機の影に赤いキャラクターもののスニーカーが見えた
「まなちゃん…?」
「…………」
とつぜんしゃくりあげる声が止まった
自販機に近付いてその影を覗き込む
そこには体育座りで目もとを赤くしてぐずぐず鼻をすするまなちゃんがいた
「……まなちゃん…」
「………」
まなちゃんに手を差し出したらまなちゃんはぷいっと顔を背けてしまった
「まなちゃん…戻ろう?」
「やだ…」
まなちゃんは顔を合わせてくれない
「でも、銀も心配してるよ」
「戻ったら心配してくれなくなるもん…」
「………」
「銀様ずっと学ばっかりなんだもん…」
まなちゃんが目に涙を溜めながら続けた
「戻ったら…また銀様学ばっかりになるもん…」
「………」
「だからもどらない…」
まなちゃんはまた顔を背けてしまった
こういう時なんて言ったらいいんだろう…
「ほんとはね…わかるの…」
「……?」
「学もね…良い人だし、銀様が別に私の事嫌いなんじゃなくて学の事好きなのも分かるの…」
「………」
「私だってあと10歳大人だったらよかったんだもん…」
「………」
この時初めてまなちゃんは銀の事がホントに好きなんだと気づいた
あっけにとられているとまなちゃんがスッと立ち上がった
「………戻る…」
「え、でもまなちゃん」
「いいから…」
そう言ってまなちゃんはさっさと行こうとした
その手を引いて引き留める
「あ、あのね…まなちゃん…俺さ…銀の事好きだよ」
「……………」
「友達だからとかそう言うんじゃなくて、その…ちゃんと…恋人として好きなんだ…」
真剣な気持ちには真剣に返さないといけないと思った
まなちゃんは黙ったままだった
突然掴んでいた手を振り払われる
「ばっかじゃない!!子供の言う事本気にして!!ばーか!!!」
「っば!?ちょ、まなちゃ…」
「別にいいもん、あと10年したらわかんないんだから!!今歳の差婚はやってるし…負けないもの!!」
まなちゃんが初めてオレにあった時みたいにべーっと舌を出した
歳の差婚って…15歳じゃ結婚はむり…っていうか今流行ってるんじゃ10年後は流行ってるかわかんないんじゃ……
………でも元気そうで良かった…
そのまま半径1mに入らないでとまなちゃんに罵られながら銀のところに戻った
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