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10年後は負けないから
とうとうまなちゃんとお別れの時が来た
まなちゃんが荷物の入ったウサギのリュックを背負って靴を履いてる
まなちゃんのお母さんとの待ち合わせ場所まで銀が連れて行くらしい
一緒に行くと言ったらだめだと言って銀が許してくれなかった…
銀はまなちゃんのお母さん(お父さん?)に会うって言うのに起きたまんまの灰色のスウェットと黒いTシャツで行くらしい、寝癖まだ治ってないし、裸足にスニーカーだし…
まぁそれでもまだカッコいいのが腹立つけど……
でも銀がこんな繕ってない状態で会うってことはそれなりお互い知ってる人なんだろうな~…
誰なんだろう?…おばさんとか…
でもそれならまなちゃんと銀は従兄弟か…
そんな事考えてるうちにまなちゃんがもう行く時間になった
やっぱりちょっとさみしい…
俺思いのほか子供好きなのかもしれない…
「ほれ、まな行くで」
「はぁーい」
やっぱり銀に対しては愛想振りまいてるし…
俺もじゃあねと小さく手を振ったけどべーっと舌を出して返された
ちょっとぐらい仲良くなれたんじゃないかと思ったんだけど……ちがったみたい…
がっくりしてるとまなちゃんが戻ってきてちょいちょいと手招きした
忘れ物かな…さっきもこうやって絵本持ってこいって言われた…
腰を折って耳をまなちゃんの口に寄せた
「10年たったら銀様はまながもらうから」
「……………」
「だからそれまで学がキープしといてね」
目をぱちくりさせてまなちゃんを見るとまなちゃんがにーっと笑った
俺に向かって笑ったの初めてかも…
ブレないなぁ………
「学と何話したん?」
「ナイショー?」
「…?…あ、学鍵締めといてな」
「はいはい」
「………学ほんとママみたいやな」
「うるさい、さっさと行け」
「フフッ、はーいじゃあいってきまーす、ママ?」
「帰ってくんな」
「オレん家やもん」
銀はまなちゃんと手をつないでエレベーターに入って行った
「ばいばい!!学!!」
「!?」
その時ちらっとまなちゃんが俺に手を振ってくれたのが見えた
ドアを閉めてその場にしゃがみ込む
嬉しさで顔がにやけた
ちょっとは…懐いてくれたってことだよな…
幼女に手振られてにやけるとか…とも思ったけどやっぱりうれしいもんはうれしかった
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