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カッコいい人にお姫様抱っこ〜健斗の借り物〜

パンッ!!と音が鳴ってみんな一斉に走りす 全員目の前に伏せてあるカードめがけて一直線だった おれも一生懸命走るけどなんだかスカートが邪魔で走りづらい ちょっとだけみんなから遅れてしまった ちょっとだけ前を走る早瀬君も見えた 皆がカードを取って「えぇ!!」とか「はぁ!?」とかいろんな声を出してる 今年も変なのなんだろうな~… おれも少しだけ遅れてカードを手に取った 内容を確認してちょっとだけ考えてから走りだす そんな難しいのじゃなくてよかった… 軽く小走りして人の波の中に目を通すと手を振る猛が見えた 「先輩!!」 「猛ー!!」 手を振りかえしてそのまま猛の前を通り過ぎる なんか猛の声が聞こえた気がしたけど今は借り物借り物… 「銀!!」 「!?」 銀がキョロキョロしながら女の子達の中からふらーっと出て来た そのまま銀の前に立つ 「なに?あれ、健斗借り物競争中じゃないん?」 「あ、うん、これ!!これ俺のカード!!」 銀が腰をかがめて俺のカードを覗きながら借り物の内容を読み上げた 「『カッコいい人(お姫様抱っこ)』……」 「ね!!だからハイ!!」 銀に向けて両手を突き出した 運び方にお姫様抱っこの指定が入ってるから抱っこでゴールしないと得点がもらえないんだ 「……かっこええやつなぁ…へぇ~」 銀がなぜか猛の方を見てにやっと笑った ちょっと気になったけど早くゴールしないと!! だってもう早瀬君が篠田先輩に肩車されて走ってるのが見える 「銀!!銀!!早く!!まだ一番取れる!!おれ一番が良い!!早く!!乗って!!」 「…健斗オレをお姫様抱っこで運ぶつもりなん?」 「そうだよ?だって指定なんだもん!!大丈夫だよ!!おれ今年握力18だったから!!!」 「…………ムリやろ…握力関係ないし…」 銀が小声でボソッとなにか言った気がしたけど聞こえなかった 早くと再度催促しようと口を開いたらいきなりふわっと体が浮いた 体が安定しなくて焦って近くにあったものに必死に掴まった 「一位やな、了解了解」 どうやらおれは銀にお姫様抱っこされてたっぽい 地面が遠い 「いや~かっこええ人にお姫様抱っこでやって…悪いな猛」 「!?」 「あ!!猛!!見て!!高い!!」 「先輩…」 「あ~健斗の太ももやーらかいわぁ…肌ももちもちで気持ちええわぁ~」 「頬付先輩!?」 「?…銀?くすぐったい…」 銀が俺のほっぺに銀のほっぺを擦りつけてくる 銀の長い髪が顔に当たってくすぐったかった 「あーごめんごめん一位な一位」 「あ!!そうだよ!!早くしないと!!早瀬君が!!!」 おれはその時ゴールと早瀬君が気になって猛の方を見てなかったけど猛はすごい顔してたんだって 「じゃ、オレ健斗連れてゴールせなあかんから~じゃな、猛」 「っわ!!」 「ッ!?」 ゴールを見ようとして上体を起こしたとき銀の唇がふにっとほっぺに当たった そのまま銀が走り出す、チラッと猛が変な顔してるのが見えた気がしたけどすぐに後ろに流れてって見えなくなった 「銀がんばれー!!」 銀の首に捕まって銀を応援する 銀は俺を抱っこしてるのに早くてすぐに篠田先輩と早瀬君に追いついた 「紺庄!?」 「早瀬くーん!!」 早瀬君もすぐ後ろになって見えなくなった そのまま銀が白いラインを越えてゴールした パァン!!って音と一緒に歓声が上がった 「やった!!!おれ一番?」 「せやで、健斗一番」 「やったぁ!!!銀ありがと!!!後で猛の唐揚げあげるよ!!!」 銀はええよええよと笑って頭を撫でてくれた やっぱりかっこいいなぁ~ その時銀が何か見つけてにやっとした 首をとんとん指差してる 「それ、ええな」 「?」 「わかってないんならええわ、なんでもない」 そのまま銀はじゃあな~って手を振っていなくなってしまった すごいな~息も切れてなかったし…かっこいいな~

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