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カッコよくない人〜猛〜

紺庄先輩がスタートしたのがここからでもよく見えた 先輩は少し遅れてカードを取るとこっちに走ってきた 「先輩!!」 「猛ー!!」 先輩に手を振った ホントにこっち来てくれた!! 先輩はこの借り物競争が始まる前にできるだけ俺のとこに来てくれると約束してくれた それが嬉しくて柄にもなく少しソワソワしていた だから先輩が手振ってこっちに来てくれた時はすごい嬉しかった のに… 「銀!!」 「!?」 先輩はオレの前を通り過ぎて少し向こうでハーレムを作ってた頬付先輩のところに駆けて行った ビックリして声が出なかった 先輩たちの声が聞こえる 「なに?あれ、健斗借り物競争中じゃないん?」 「あ、うん、これ!!これ俺のカード!!」 「『カッコいい人(お姫様抱っこ)』……」 「ね!!だからハイ!!」 「!?」 先輩が頬付先輩に笑顔で手を差し出してた もしピンク色の髪の人とか背の高い同級生とかそういうオレが確実に外れてる物であれば納得もできた… いや決して自分をカッコいいと思ってるわけじゃないけど…頬付先輩に勝てるとか思ってはないけど…でも… 「……かっこええやつなぁ…へぇ~」 いやな声がしてそっちを見ると案の定頬付先輩がにやーっと嫌な笑いを浮かべてこっちを見てた すっごい腹立つ… 「銀!!銀!!早く!!まだ一番取れる!!おれ一番が良い!!早く!!乗って!!」 「…健斗オレをお姫様抱っこで運ぶつもりなん?」 「そうだよ?だって指定なんだもん!!大丈夫だよ!!おれ今年握力18だったから!!!」 「…………ムリやろ…握力関係ないし…」 紺庄先輩が頬付先輩の手を引っ張ってた っていうか先輩自分が頬付先輩を抱っこするつもりだったんだ… 握力18って…かわいい… こんな状況でも紺庄先輩が可愛いとか思うオレはホントに重症だと思った 先輩の可愛さに悶えて顔を上げると頬付先輩にお姫様抱っこされた紺庄先輩が見えた 「いや~かっこええ人にお姫様抱っこでやって…悪いな猛」 「!?」 「あ!!猛!!見て!!高い!!」 「先輩…」 「あ~健斗の太ももやーらかいわぁ…肌ももちもちで気持ちええわぁ~」 「頬付先輩!?」 「?…銀?くすぐったい…」 「ッ~~~~~~!!!!!!」 頬付先輩がにんまりわらって紺庄先輩の太ももを撫で頬に頬ずりしてた 声にならない声が出た 頭の中でもいろんな感情がない混ぜになって良くわかんなかった 「じゃ、オレ健斗連れてゴールせなあかんから~じゃな、猛」 「っわ!!」 「ッ!?」 しかもその上頬付先輩はにやっと笑って紺庄先輩の頬にキスした 今度はもう声が出なくなった そのまま何か言い返す暇もなく先輩はぴゅーっとゴールに走って行ってしまった 放心していると遠くでパァン!!って言う音と歓声が聞こえたけどまだオレは放心したままだった 頬付先輩………!!!

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