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志波の罠

「いててて…学…銀くんいいの?」 「………どこ行ったか…わかんない、し……」 「ふぅ~ん?」 結局銀を追いかけずに志波の手当てをしている 近くの銀がよく使ってるコンビニで氷やなんかを買ってきた ………そういえば銀さっきも個々のコンビニの袋持ってたな… ボーっとそんなことを考えていた 銀を追いかけなかったのは怖かったからだ もし追いかけてまたあんな顔されたらと思うと怖かった 銀に嫌われたくなくて追いかけれなかった 結局勇気がないんだ… じわっと涙が滲む 志波の前なのに…かっこわる…… 俯いてると溜まった涙がぽたぽたこぼれてアスファルトの色を濃くした ぐっと歯を食いしばってみても涙は止まらなかった 「学…?」 「…………」 「大丈夫だよ学」 「…………」 志波が俺を抱きしめて優しい声で言った 余計涙が止まらなかった 「ごめんね…俺が悪いんだ…学にあんなことしたから…」 「…………」 俺はゆるゆると首を振るので精いっぱいだった 銀は何が気に入らなかったんだろう…… 俺だって精一杯素直に気持ちを伝えたつもりだったし志波だって誠心誠意謝ってくれた… なのに…何が悪かったんだろう… あれでダメだったら…俺は…もう… どうしたらいいかわからなくて涙が止まらなかった 鼻水も垂れてきてずるずる鼻をすする音までしだす 志波はその間もずっと背中を撫でてくれた ………………もう……だめなのかな…… そんな考えが自分の中で浮上する 自分が考えたことながらゾッとした 体中震えが止まらなくなってなんだか苦しいような気もしてくる ひゅーひゅーと呼吸もうまくできない 「学…」 「…………」 やだ…銀に嫌われたくない…一緒にいたい… どんどん思考がネガティブになって最悪の想像しかできなくなってしまった そんなときに志波が口を開いた 「……ねぇ…学………」 「……?…」 「学は十分頑張ったんじゃないかな……」 「…………」 「でも、その頑張りは銀くんには届かなかったんだよ」 「…………」 「…もう、諦めなよ」 ぎゅうっと心臓がわしづかまれたみたいに苦しくなる 俺は俺なりに頑張った…銀のとこに来て直接銀に気持ちも伝えた、なのに結果的に銀は怒ってしまって………銀に俺の気持ちは届かなかった……?… 悲しくてしょうがなくなる でも志波の言う通りなのかもしれない… もうこれ以上やるべきことがわからなかった もう……諦めた方がいいのかもしれない…… 「かわいそうな学……」 志波がするっと俺の腰を愛おしそうに撫でながら俺の耳元でそう言う その時志波はにんまりと勝ち誇ったような顔をしていた でも気持ちが沈んでうつむいてた俺は気づけなかった こんなことをされても俺は志波はいい奴なのだと信じていた…… そのまま志波に抱かれて俺は泣き続けた 「……いろいろ…ごめん……」 「だから謝らないでよ、学一人で帰れるの?大丈夫?」 「だい、じょうぶ……」 自分で物を考えれるようになるまで泣きまくった 目は真っ赤で腫れてすごい不恰好だったと思う 志波は最後まで優しくしてくれた 銀のマンションの前で志波と簡単なあいさつをして別れる 志波は最後まで手を振って見送ってくれた しばらくして俺の姿が志波からはほとんど見えないぐらいまで歩いた時 志波はまた一人でくすくす笑ってた 今度はさっきまで俺を抱いてた腕で自分の体を抱きながら… 「………もうちょっと…もうちょっとで俺のものだね……」 もちろん俺はそんな声も様子も知らずにふらふらと駅まで歩いていた

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