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コーヒーとサンドイッチ
まなは結局アイツの方が大事やったんやろ
その証拠に追いかけても来ないやん
まなが悲痛そうに俺の名前を呼んだ声や志波が奥で勝ち誇ったように笑ってた顔を思い出した
ほんまに…なんなん………
近所の公園のブランコの腰を下ろして今朝朝飯にかったコーヒーとサンドイッチを開ける
すぐ戻るつもりで出て来たからそんなに厚着をしていなかった
吐く息は白いしもう12月、もうすぐでクリスマスや…
さすがにTシャツの上にパーカーだけだと寒かった
はぁっと吐いた白いため息が空気に交じって消えて行くのを眺める
……寒いなぁ…
その時自分が思いのほかショックを受けてるとわかった
そんな女々しさにも腹が立つ
まぁ心のどこかでまなが追いかけてこないかとか考えてる辺りもう相当女々しいんやろうけど…
「はぁ…」
またため息が漏れた
コレ…嫉妬って感情やなぁ…
まなが絡んでくると冷静になれなくなったなぁと最近思う
まなはまぁオレや猛や健斗ほどじゃないにしろモテる
オレに寄ってくる軽い女と違ってまなを好きになる女子はみんな中の上ぐらいの顔立ちの気立てが良くて品のある子ばかりやった
いっつも物静かで恋愛と無縁そうなやつがまなと話すときだけ楽しそうに笑ってたり…よくあることだった
そしてそんな子に告白されるとまなはいっつも元気がなくなった
元気がないって言うか疲れがたまってるって感じ
そんなん好きじゃないとかタイプじゃないとか言うて断ったらええやんって言ったらそんな事言ったら相手が傷つくだろって怒られたこともあった
まなは断るのが苦手らしい
断った後もずっとそわそわしてその子に気を使うからいっつもまなが誰に告られたかなんてすぐわかるようになった
オレはそうやって告白される度に心労を重ねるまなを見るとイラッとするようになっていた
一週間近くそういうエロいことをするのも乗り気じゃなくなるし一週間過ぎてもその子の前ではオレと話すのすら拒んだ
でもイラつくのは別にそれが原因じゃなくて単純に学がオレ以外に影響を受けてそんな変化を与えられてることに悶々とした
ぶるっと震えて寒かったことを思いだす
食べ終わったサンドイッチの袋を丸めてコーヒーの缶を潰して少し遠くにあるゴミ箱に投げた
こーんといい音が鳴ってゴミがゴミ箱の脇に転がる
もう一度ため息をついてゴミをゴミ箱に入れなおしてから公園を後にした
何となく家には帰りたくなかった
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