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独り

「……ただ、いまー………」 誰もいない家に入っていつもしないような挨拶をした もちろん返事が返ってくるようなこともなくてなぜかそれに虚しくなってしまった 家に戻って一人になってやっと頭が動き出すとさっきの事が思い出された 『…………結局そっちやん……』 眉間にしわを寄せてた銀の顔を思い出す 『でも、その頑張りは銀くんには届かなかったんだよ』 俺の気持ちは銀には届かなかった… きゅぅっと苦しくなって玄関に座り込む また頬に涙が伝って落ちてきた 「…っえ…っうぇ…っず…」 俺……ちゃんと思ってることを言った…銀にちゃんと伝えた…のに……素直に…なったのに… 『…もう、諦めなよ』 志波の言ってた事を思い出した 諦める………銀を…諦める…… 「っう…うぁ…うぅうぅ…」 そんな事を考えると悲しくてどうにかなりそうだった 情けなくて怖くてどうしたらいいかわからない 一緒にいたい… また前みたいに優しく笑って頭を撫でて欲しかった まなはオレのやで?って言って欲しかった でも… 『触んな…』 銀は俺をあんなにはっきりと拒絶したんだ… 俺を睨み付けて嫌悪した銀の表情と声がフラッシュバックして震えが止まらなくなる 自分でも思い返すだけでこんなに怯えて不安になるなんておかしいってわかってるのに不安に押しつぶされそうで涙が止まらなかった 思わずスマホの電話帳を開いて銀に電話を掛けそうになる 銀だって時間が空いて俺の話を聞いてくれる余裕が出来たかもしれない、電話でだったら顔見なくていいから俺だってもっとちゃんと謝れるかもしれないって思った 早く銀に許してもらって不安を吐き出してしまいたかった でも同時にもしそれで重いと思われたりしたら…そんな考えも浮かんだ 今朝謝っても銀は許してくれないぐらい怒ってたんだ…なのに今もう一度電話で同じこと言ったって… 重いとか面倒くさいとかそんな言葉ばかり頭に出てくる 銀にそんな風には思われたくなかった スマホの電源を落として腕に顔を埋める そうやって一人でどうしようもなく泣くしか今は思いつかなかった

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