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ごめんな…
「あーあ…もう朝や…もう電車走っとるけど…このままはなぁ…」
オレの上着を着てその下から覗くまなの生足がを眺める
まなは溜まった疲れのせいもあって俺の背中ですやすや寝息をたてている
安心した顔でオレの肩に頭を乗せて眠るまなの顔に顔をすり寄せた
あの後まなはきっぱりいやだって言ってくれた
とろーんとした顔で体もふにゃふにゃで疲れて頭もまわらないようなまんま「やっ…いら、ない……」って言っとった
まなはいやだって言ってくれると思っとったけどその後オレに何度も好きだと言いまくってくれて大サービス
志波にはしっかり念を押しておいた
なんかぼーっとして聞いとるのか聞いとらんのかわからんかったけど別に今後まなから目離したりせんし…
まなの服について聞いたら自慰に使ったらしくドロドロになっとって着せれたもんじゃなかった
ホントにまなの服でオナったとか…腹立つ…
かといってまなもオレのパーカー羽織ってるだけじゃ今時期寒すぎるやろうし、オレかてロンティー一枚は寒い…
タクシー乗るのもなんかめんどくさいコトなっても困るし…うーん
スマホを確認すると朝の7時を過ぎるとこやった
…………休みやけど…アイツなら起きとるやろ…
そう思って電話帳からそいつの名前を引っ張ってきて電話を掛けた
プルルルルプルルルル…っていう着信音の後に「……はい…」って言う心底嫌そうな声が聞こえた
「あー猛?まな見つかったわぁ」
「あ、そうですか、良かったですね…大丈夫でした?」
「あーうん、大丈夫大丈夫」
ちょっとだけ猛の声が明るくなった
少しは心配してくれてたらしい
「それでなー…」
「嫌です」
「………」
「………」
「……まだなんも言って無いやん…」
「嫌です」
「………」
……無駄に勘のいい奴…
すると背後から「たけるぅ…」って言う甘ったるい寝ぼけた声がした
「先輩、起きたんスか?」なんて言う猛の声も聞こえる
なんや健斗も一緒なんや……
また電話の向こうから声が聞こえた
「たけるぅ…でんわぁ?だれぇ~?」
「あ、頬付先輩ッス…学さん見つかったって…」
「えっ!!ホント変わって!!」
「あ、ちょ…紺庄先輩!!」
「もしもしっ!!」
「………もう…」
健斗の元気な声がスピーカーのすぐ近くで聞こえた
好都合やった
「もしもし~健斗?おはよお」
「銀?おはようっ!!学いたの?」
「んーおったおった」
「よかったね!!仲直りした?」
「んーしたした」
「そっかぁ~」
健斗がニコニコしてるのが手に取るようにわかった
とりあえず近くの公園のベンチに腰を下ろした
……つめた…
さすがにこんなベンチにまな寝かせるのは気が引けて膝の上に乗せなおした
学はやっぱり寒いのか首をすくめオレにすり寄ってくる
…オレも寒いしなぁ…はよせな…
「あのなぁ、健斗、猛に頼みたいことあるんよ?」
「猛に?」
「そうそう、猛に」
この辺から猛の「先輩!!スマホ返してください!!」って声が聞こえて健斗の「あ、猛!!かえしてよう!!」って声が聞こえた
さらに猛が「紺庄先輩早くトイレ行っとかないとうちのトイレ込みますよ」って言ったのも聞こえた
「……先輩、紺庄先輩使うのズルいです」
「だって猛聞いてくれないんやもん、オレとまな凍死しそうなんやけど」
「………嫌です…」
もうひと押しやと思った
猛なんだかんだ言って押しに弱いしな
笑いそうなのを一生懸命我慢した
まなが足を擦り合わせるからできるだけオレの体との間に挟んでやった
それでも寒そうやった
早くしないと風邪ひくやろなぁ…
くしゅっとくしゃみが出た
オレもう風邪ひいたやろか?
どっちにしろはよせな…
「猛聞いてくれないんなら健斗に頼むで?」
「……………」
「健斗こんな寒い日に朝から外出すんや?かっわいそー」
「……………」
「たけるくぅん、おねがぁい♥」
「……………………今回だけですからね……」
「わぁい、たけるくん、やっさしぃ~」
「キモいです、死んでください」
「そんなに!?」
そんなやり取りをしながらも猛に場所と要件を伝えて服と上着を持ってきてもらえることになった
「………もう…じゃあ今から20分後に行きますからね!!」
「あーい、待っとる~」
「頬付先輩は凍死してくれてもいいです」
「なんでそう言う事言うん…」
「本心です」
そう言って猛は電話を切ろうとした
「あ、猛」
「……まだなんかあるんスか…」
「……ありがとな…」
「…………なんスか…いきなり…怖いんスけど……」
「べつに?なんでもないわ、じゃああとでな~」
そのまま電話を切った
まながまた寒そうにブルッと震えた
ギュウッと抱き込んでやる
「………まな、ごめんな……」
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