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大丈夫ですよ

家に帰りついたのはもう暗くなってしまってからだった ………先輩に申し訳ないことしちゃったな… 「………ただいまー…」 遠慮がちに家に入ると美香がこっちに顔をのぞかせて眉をひそめた 「………ただいま……」 「………おかえり…」 相変わらずじとーっとした視線を向けてくる 「…たけ兄どこ行ってたの?」 「………」 「……健斗さん、泣きそうな顔して来てずっとたけ兄の事待ってたのに…」 「……先輩は…?」 「疲れて寝ちゃった、唐揚げもたけ兄と食べるからってずっと待ってたんだよ?」 「………ゴメン…」 「健斗さんに言いなよ」 美香が珍しく怒ってた でもオレが悪い… そのまま美香の隣を通り過ぎると姉貴が居間にいた 机の上にはちょっと色の黒い唐揚げにラップが掛けられている 姉貴はその前に座って同じく険しい顔をしていた 「………遅くなってゴメン…」 「猛…」 「…………」 「どこ行ってたの?」 「……ちょっと昔の後輩にあって…」 「………そう…」 姉貴はあまりオレにいろいろ聞いては来なかった 「これ、健斗くんが猛にって作った唐揚げだから」 「…………」 「あと健斗くんあっちで寝てるから」 そう言って奥の部屋を指差した 奥の部屋に行くと紺庄先輩がオレの布団の隣に敷いてある予備の布団からはみ出してオレの布団にくるまって眠っていた すやすやと寝息を立てている 「先輩…」 「…………」 「……スイマセンでした…」 先輩は顔をオレの布団に押し付けて丸まっていた 先輩の頭を撫でて髪を梳く 「……ん…」 「………」 「あ、れ…だれ~…」 「………」 先輩が少しもぞもぞと動いて寝言を言い出す ずっと「だれ~」って言い続けてたまにオレの名前を呼んだ ………そんなに不安がることないんスよ… むにゃむにゃいいながらオレの手に顔をすり寄せる先輩を見て思った …オレ、先輩以外の事好きになったりしませんよ… 先輩の体がもぞもぞ動いて今度は先輩の手がオレの手をきゅっとつかんだ ………大丈夫ですよ…

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