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おれの好きな物
誰かに体が揺さぶられて目が覚める
うー…まだねむいよぉ…
「……ぱい…じょう先輩…」
「…う…ん……」
「……先輩、起きてください…」
「…た、ける…?」
目を開くと猛がこっちを覗き込んでいた
あれ…?
「あれー…たけるー?」
ぎゅーっと猛にしがみつく
猛の匂いがするぅ…
「……先輩…寝ぼけてんスか…朝飯できたから食ってください、学校行きましょう?」
「うーん…」
よいしょ…っと体を持ち上げられる
「ほら、先輩自分で歩いてください、飯準備しとくんで顔洗って来て下さいね」
そう言って猛に押されて洗面所まで連れて行かれた
そこで顔を洗ってやっと昨日の事を思い出した
ど、どうしよう…聞きそびれちゃった…
ちょっとしゅんっとなりながら猛の待ってる居間に戻ると猛がもう制服にエプロンを巻いて朝ごはんの準備をしてた
でも、やっぱり…きかなきゃ…
「あの…猛…?」
「……………」
「…たける…?」
「……………」
猛は返事をしてくれない
困っているとトンッと目の前の机にお皿が置かれた
おれが昨日作った唐揚げをあっためなおしたのだった
しかもその後も次々とお皿が並べられていく
お味噌汁はおれの好きなきのこのお味噌汁だし甘くて黄色い卵焼きもあるご飯にも甘い小さい魚のやつが乗ってた
全部おれの好きなのだ…
顔を上げる
目の前には真剣な顔した猛が座ってた
「昨日のは中学の時の後輩で辻若葉って言います」
「………………」
「先輩に紹介しなかったのは…そんな先輩が不安がることもない相手だし…その……オレ中学のころとか…そんな胸張れたことしてなかったし…正直……あんまりいいたくなかったからです…」
「………………」
「不安にさせてスンマセンでした」
そう言って猛が頭をさげた
おれはその様子を目をぱちぱちして見てた
胸がキュゥウンってなる
思わず机のわきを通って猛に抱き着いた
猛がうわって声を上げたのが聞こえる
なんだかすごくうれしかった
猛もぎゅーってし返してくれる
しばらくそのままにしてたら猛が口を開いた
「………飯、冷める前に食って学校行きましょうか…」
「手繋いで学校行こうね!!」
「えぇ!?手ですか!?」
「………イヤ…?」
「………イヤ、じゃ、無いです…」
「ふふふっ、じゃあいただきまーす!!」
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