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ケンカ嫌い

その日から若葉はオレのとこに来なくなった せいせいしたと思ったけど何か心の中で引っかかった 「……猛…」 「…………」 先輩はあれからいっつも若葉を心配したりオレの心配をしてくれる 「………あれから若葉ちゃん来ないね…」 「………」 「…猛、若葉ちゃんの事心配じゃないの…?」 「………」 「……猛……」 若葉の事は心配だった… そりゃ後輩だしあんなに怪我をしてたら知り合いじゃなくても心配になる でもだからと言ってケンカする気はなかった 誰かを殴るのも殴られるのも嫌だ… 「若葉ちゃん…きっと猛が助けてあげたら喜ぶよ」 「………でもオレもうケンカする気ないッスから…」 「………うん…」 「…………」 そうやって先輩とも変な空気のままだった 学さんにも大丈夫かって心配された 頬付先輩は…まぁ…いつも通りだったけど… オレは若葉が思ってるような正義感の強い人間でもカッコいい人間でもない 若葉が憧れるようなケンカに強くて情にあつい男なわけでもない キラキラした笑顔を浮かべて尊敬のまなざしで見つめてきた若葉の事を思い出す ………オレにどうしろって言うんだ…… ちょっとだけ胸が痛んだ 「で、でもさ…もしかしたら若葉ちゃんもちょっとしたらまた来てくれるようになるかもしれないし…」 「…………」 「若葉ちゃん…猛のこと…好きだし…」 「…………」 「だから…あの、さ…元気…出してよ……」 「…………」 そう言いながら先輩の声はどんどん小さくなっていってしまった 先輩がきゅっとオレの服の袖を遠慮がちに握ってる でもどうしたらいいのかわかんないんスよ… 先輩の悲しそうな寂しそうな顔を見て余計胸が痛くなった …若葉……

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