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助けて若葉ちゃん
「お前ほんっとにバカなんだな~」
いつの間にかおれのすぐ後ろにいた偉そうな人がそう言った
ムッとする
「…馬鹿じゃないよ!!」
「いーや、バカだね、まだオレ達のこと吉田の知り合いかなんかだと思ってんだろ?」
「……違うの…?」
そう言われて急に不安になった
俺の不安そうな声を聞いて回りの人たちが笑う
若葉ちゃんはまだ下を向いてて顔は見えなかった
もっともっと不安になる
「……猛の…友達じゃないの…?」
「くっ、ひひひ…」
偉そうな人も笑うだけで答えてくれなかった
どんどん怖くなる
「で、でも……ここくるとき、猛の知り合いだって…」
「ぶっ、ははははは!!」
それを聞いてみんなもっと笑い出した
嘘…なの……?
偉そうな人も周りの人たちもおれがビクビクするたびに大笑いした
怖い…
小学生の時もこんな事があった
チビだってばかにされて大泣きして泣けば泣くほどおれをいじめてた子たちは喜んでもっとおれをいじめた
そのたびに学に弱虫だの泣き虫だの言われた…
猛は…?
猛が来るのも嘘なの…?
涙目でぷるぷる震えてたら偉そうな人が「はぁーあ…」っと大げさに笑うのをやめておれの方を見た
「やっとわかったか?吉田もかわいそうになぁ…こんなバカが恋人なんて…」
「そ…そんなこと…ないもん……」
「あぁ!?聞こえねえよ!!」
「ヒッ!!」
ガッとシャツの襟をつかまれて揺さぶられる
顔の近くで大きい声を出されて偉そうな人の唾が飛んだ
やっと自分がはめられたんだと気づいた
怖い…怖いよ、猛……
偉そうな人が何か言うととりまきみたいな人が来ておれの腕を引っ張ってどっかに連れてこうとした
足をばたばたするけど持ち上げられて足がつかない
「やだ!!離して!!帰して!!」
そんな事を言っても誰も聞いてくれなかった
その時やっとこっちを向いた若葉ちゃんと目が合った
「若葉ちゃん!!」
「!!」
若葉ちゃんがビクッと体を揺らす
若葉ちゃんなら助けてくれると思った
「助けて…助けて若葉ちゃん…」
「…………」
若葉ちゃんは何も言わない
またばつの悪そうな顔をしてそっぽを向いてしまった
「わかばちゃ…」
「…………」
わっはっはっはっとまた周りの人たちが大きい声で笑う
なんで……
そんな事思っても若葉ちゃんはこっちを見てもくれなかった
「っや…やだっ…!!やだ!!猛!!たけるっ!!」
どんなに抵抗してもその人たちは離してくれなくておれを乱暴に引っ張って奥に引きずって行った
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