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今カレと今カレ
うっかり銀の事も忘れて静香さんと話し込んでしまった…
スマホも財布も鍵も定期も全部置いて駆け出してきたから銀と連絡も取れないし帰ろうにも帰れない
お店ももう閉まってるだろうし…銀困らせちゃったな…
それにもう一つ気になることもある…
『あの人』って誰の事だろう…
そう思いながら走ってコーヒーショップの前まで戻ると足元に二人分の鞄を置いてスマホの画面を眺めながらお店のシャッターに寄りかかる銀が見えた
「銀!!」
「…………」
銀に声を掛けたけど銀はチラッとこっちを見てまたスマホに向き直ってしまった
お…怒ってる……?
「ぎ…ぎん…?」
「…………」
「お、こってる…?」
「…………」
しーん…としたまま銀は動こうとしない
そりゃそうだよな…あんな状態で俺のために銀だって恋愛感情ではないにしろ好意はある静香さんにああいうこと言ってくれて…なのにその俺が静香さん追いかけて出て行って…しかも連絡は取れないしこんなとこでこんな時間まで待たされたら…
こっちを見てもくれない銀の顔を覗きこむ
「あ、の…静香さん…放っとけなくて…」
「…………」
「で、その…見つけたらいろいろあって…話込んじゃって……」
「…………」
「ご、ごめん…」
「…………」
そこでやっと銀は俺の顔を見てくれた
まだ怒ってたらどうしようって内心びくびくしてたけど銀は俺を見つめてぐいーっと俺を引っ張って抱きしめた
お、こって…ない……?
銀は身じろいで抱き心地の良い位置に俺を収めようとしている
人通りとかが気になったけれどこんなほとんどのお店が締まっている通りを利用する人もほとんどいなくてホッとして銀に抱かれてた
「ご、ごめん…?」
「もう怒ってへんよ…」
「……ごめん」
「ふふっ、ええって…」
銀がスンスンと鼻を鳴らして俺の首筋の匂いを嗅ぐ
いつもなら離せとか言うけど人もいなかったし静香さんから聞いたことも気になってなんだかそんな事言う気にもならなかった
聞いてもいいかな……
「ねぇ…ぎん?」
「んー?」
「あの、さ…」
「んー」
「静香さんが言ってたんだけどね…『あの人』って誰?」
「…………」
銀はちょっと前に俺が静香さんの事を聞いた時みたいに突然返事をしなくなって動かなくなった
また少しして口を開く
「静香さんが…裏切ったってさ…なに…?」
「…………」
銀はその問いにも口を開かなかったけどぎゅーっと俺をきつく抱きしめた
………銀…?
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