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大丈夫だよ
それだけ言うとあの人はさっさとどこかに消えてしまった
オレが呆然としてる間に
「またね」
なんて楽しそうに言ってハッとしたときにはもういなくなってた
ボーっとベットで横になったままそれを思い出す
目の前にはまなの首があってオレの頭の後ろにまなの腕が回ってた
…………あったかい……
まなの肌と自分の肌が擦れて密着してる感覚が心地いい…
ギュッと腕に力を入れてまなに寄ると、んー…っとまなが唸った
まなのせっけんみたいな匂いとちょっと高めの体温を直に感じる
もっと顔を寄せるととっとっとっと…っと一定のリズムで鼓動が鳴ってるのがわかってより安心した
…………落ち着く……
あの時…まなが『あの人』の…兄貴の事を聞いてきた時、頭が真っ白になった
兄貴に会った事、兄貴とあった事はまなには言わないでおこうと思った矢先だったから動揺して4年前の感覚を思い出して胸の奥に突然ぽっかり穴が開いたような気がした
まだ違う…あの時とは違う…
そうわかってたはずなのにとてつもなく虚しくなってまなが自分から離れていったらと思うとゾッとした
「…………」
「………んーぅ…むー…」
まなは顔に日光が当たるのが嫌なのかうんうん唸って、体をねじってうまいこと日光を遮ろうとしていた
大丈夫…
不安感が募ってまなを近くに感じたくなった
それで昨日みたいなことになってしまったわけやけど…
まなの手首が少し赤くなってるのが目に入る
きっと後ろも切れてるんだろう
あんまり覚えてないけど血が出てた気がする
でもまなはそんな事をしても許してくれて抱かせてくれた
いつもよりオレに余裕がなかったのがわかってたんだと思う
珍しくまなは拒絶の言葉を言わなかった
ちょくちょくオレの顔を覗き込んで心配してくれて何度も好きだって言ったオレに毎回自分も好きだって返してくれた
最後だってオレを抱き込んで大丈夫か尋ねてくれていっつも熱いとか言って嫌がるのにオレを抱きしめたまま眠ってくれた
ぽふっとまながオレの頭に顔を埋める
きっと眩しいんやろうけどなんだか愛おしかった
まなの細い体をさらに抱きしめる
「………ぎん、苦しい…」
「ん…」
「………」
起こしてしまった
「……………落ち着いた……?」
「……ん、ありがと…」
「…んー……」
ぽんぽんとまなが頭を叩いてくれた
寝ぼけてるだけなのかもしれんけどオレにとってはそれにすごく安心した
再度きゅーっとまなを抱きしめる
まなもオレの頭をぎゅっとし返してくれた
「………ぎん…」
「……ん…」
「その、さ……大丈夫…だよ…」
「………」
「お、れ……どこも行かないよ…」
「……………ん…」
まなに兄貴の事は少しも話してない
でもまなは人の気持ちがよくわかるからオレが誰かと何があったかわからなくてもこういうことが言える
そんなまなに毎回救われる
またまなが頭をぽんぽんってしてくれた
まなの心音と一緒のリズムでそのうちまた眠くなってきた
ゆっくり目をつぶる
「……す、きだよ……」
まながそう言ってくれた気がした
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