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頬付金

「…銀?」 銀がものすごく怒ってるのは見た事があったし笑ってるのも見たことはあったしちょっと悲しそうだったり寂しそうだったりしてるのも見たことはあった でも銀がこんなに怯えた表情を露骨に前面に出しているのは初めて見た 「銀、どうして…」 「おー今日はその子もいるんだ?」 「ッ…!!」 さっき銀に声を掛けた誰かの声が聞こえてそっちを向こうとしたけど銀に引っ張られて庇うように背中に隠された 背中に押し付けられてちょっとだけ苦しい 身動きが取れないから誰が声を掛けてきたのかも見えなかった くそ…もうちょっと背が高ければ… 声の主がハハッと笑った声がすぐ近くで聞こえる 周りの人たちもちょうど銀の正面を見てるからそこにいるんだと思う …………って言うかこれすごい目立ってるんじゃ… とたんに顔がカァッと熱くなってちょっと恥ずかしくて銀の背中を押したり身じろいだりして離れようと抵抗してみたけど銀の腕にしっかりと押さえつけられてて銀から離れることはできなかった 「ひどいな、そんな怖い顔しないでよ別に何するわけじゃないし」 「…………」 「『お友達』、実の兄にぐらい紹介してくれてもいいんじゃない?」 ………実の…兄…? その人は確かにそう言った 誰が?誰の? 「ねぇ…銀?」 「…………」 銀の背中から伝わる鼓動が早くなって腕にキュウッと力が入ってた 「銀?」 「…………」 その人がもう一度銀の名前を言うと銀は一瞬ぎゅっと俺を背中に押し付けた後に渋々って感じで手の力を緩めた 恐る恐る銀の影から顔をのぞかせてその声の主を見てみた 「初めまして、銀の兄の頬付金です」 「…………」 にこっと笑ってそう挨拶したその人は銀とそっくりだった まわりがざわざわしてたのもうなずける 髪型は銀より短くて暗い金色って感じで、服装もいっつもTシャツとジーンズと同じスニーカーな銀と比べたらいまどきの若い人って感じでオシャレだったけどそれ以外の身長や顔なんかは銀とそっくりだった でもよく見たら金さんの方がたれ目で目じりにほくろがあって優しそうに見える その間も銀は不機嫌そうな顔をしてそっぽを向いてた

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