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すれ違い

「ただいまー…」 やっと買い物が終わって帰ってきたころにはもう夜の6時過ぎになっとった ………思いのほか時間かかったな… さっき兄貴の彼女とは玄関先で別れた 靴を脱いで家に上がる 何故か家の中はシーンとしていた 兄貴出かけとんのか…? あ、でも靴あるわ………?…女物の靴も…あれ…?この靴どこかで… そんな風に思いながらとりあえず買った食べ物類を適当に冷蔵庫に詰めてついさっき受け取った静香へのアクセサリーを持って二階に上がった 静香が驚いて喜ぶ顔がただただ見たくて楽しみだった ただそれだけだった…なのに… 「あぁ…銀おかえりー…」 「………あに、き…なにやって…」 部屋のドアを開けると兄貴がオレのベットに上半身裸で座って煙草を吸ってた 部屋には煙草の煙と混じって嫌なにおいが充満していて思わず鼻を覆った 一瞬兄貴に気が行ってオレはベットの上を見てなかった 「………ぎん……」 そこから聞こえてきた声と目に入ってきた光景が信じられなかった 静香が裸でうつろな目をしてオレの方を見つめてカサカサになった唇でオレの名前を呼んだ 頭が真っ白やった 「………しず…か……?」 「…………」 「ふふっ…」 何故か兄貴だけ楽しそうに笑っとる 思わずカッとなって兄貴を床に引き倒して首もとを閉めるようにして頭を揺すった 煙草が床に落ちてジュッとカーペットを焦がす 「なにやっとるん!!」 「なにって…別に?」 「別にじゃないやろ!!人の…しかも弟の彼女相手に兄貴はなにしてんって聞いとんねん!!」 なんだかわけがわからなくなって意味もなく目から涙がこぼれた 頭の中のぐちゃぐちゃした感情が涙になって出てきたみたいやった 「あぁ…それなら彼女ちゃんに聞いたほうが早いんじゃない?別にオレ無理やりやったわけじゃないし…」 「………何言って…」 兄貴はそう言うと力の緩んだオレの腕を払って床に落ちた煙草をあーあ…なんて言いながら拾って再度咥えて火をつける 静香はその様子を体に布団を巻きつけてボーっと眺めとった 「静香!!なにがあったん?」 「………」 「ごめんな…ごめんなぁ…」 「………」 ボーっとしたままの静香を抱きしめて背中を撫でた でも静香は何故かオレの胸をドンッと押してオレから体を離した 反動で地面に尻もちをつく 「………しず…か…?」 「………んで……」 「え……」 「なんで別の女の人の前であんな顔するの……?」 「……え…」 静香の目からぶわっと涙があふれる 静香の言ったことに全然身に覚えがなかった

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