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「なにか」の崩れる音

静香は目から大粒の涙をこぼしてしゃくりあげている オレが?静香以外の女と…? 兄貴だけは楽しそうに煙草を吹かして我関せずって感じやった 「今日…私誕生日だったのに…」 「………」 静香はうつむいて泣き続けた 「私の誕生日より大事な用事って…その女の人と会う事なの…?」 「!?」 そうして静香がオレに見せてきた写真はオレが兄貴の彼女と今日買い物をしているときにとられた写真やった 「これは静香が誕生日やったから…」 「言い訳するの?」 「言い訳とかやな…」 「そうよね…銀…女の子にモテるもの…私みたいな地味な女よりそう言う人の方が…」 なんだかその言い方にカチンと着てしまった なんで?なんで信じてくれないん?…なんで話しすら聞いてくれないん… 今思えばもっと優しくしてやれば良かったと思う オレの事を疑ってホントかどうかも分からんうちに兄貴に言われるがままそんな事をしてしまってそしたら静香はもうオレ攻めるしかできないのに… 「なんでなん…なんで信じてくれないん……?」 「……!!」 足元に置いてあったアクセサリーショップの袋が倒れて中から静香の名前が書かれたバースデイカードと静香の名前と付き合い始めた日にちが彫り込まれた指輪の入った箱が転がり出てきた 静香がそれを見て目を見開いく でもオレはもう止まらなくなってしまった 「なんでオレより兄貴なんかの言う事信じるん!?」 「………ぎん…わ…わたし…」 「なんでオレの事信じてくれないん!!」 確かに静香のことを真剣に好きになるまではいろんな女子に対して思わせぶりな態度を取っとったし複数の女子に好意を寄せられることを悪くないなんて思ったり、そんな自分がカッコいいなんてうぬぼれたりもしてた 静香にもそう言う軽率な男やと思われとるんやろうなって思っとった… でも…でも静香やってオレと付き合ってわかってくれたとおもっとったのに… 体中からだらんと力が抜けて涙がこぼれた 苦しくて…悲しくて…静香に信じてもらえなかったことが…静香が信用できないような男だったことが不甲斐なくて辛くてどうしようもなかった… 「なんで…なんでなん…しずか……」 「………」 そう言うと静香は一瞬瞳を揺らして息をつめた後自分の服とバックを持って走って部屋を出て行ってしまった 床にはオレが一生懸命デート代をケチったり父さんの手伝いなんてダサいことして貯めた小遣いで買った静香への指輪が箱から飛び出して転がっていた 力が抜けてその場に座り込んだ 今頃静香と一緒に誕生日祝って…プレゼント渡して…ケーキなんかくって楽しく過ごしてるはずやったんや… それが一瞬にしてめちゃくちゃになってしまった…… 直観的に静香とはもう終わってしまったんだと思った 自分の中でそういうことになってしまった… 兄貴は相変わらず楽しそうに煙草を吹かしながらそっと部屋を出て行った 頭の中で何かが崩れ落ちる音を初めて聞いた…

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