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なんでなん…

気が動転して服もワンピースを着ただけで走って家まで帰った 銀が良く似合ってるって、かわいいって褒めてくれてお気に入りだったミュールもめちゃくちゃに走ったせいでボロボロになって足も靴擦れなんかのキズが付いた がむしゃらに走って周りに変な目で見られたけどひとりになりたかった 「っう…うぅ…」 バタンと部屋の扉を閉めてドアに寄りかかるようにしゃがみこむ 気に入ってたワンピースも汚れて髪も乱れてしまっていた 首から去年銀に貰ったハートのネックレスがぽとんと落ちた さっきの悲しそうな銀の顔を思いだす 私はなんてことを… ぎりぎりと胸が締め付けられるみたいだった でも…きっと私なんかよりも銀の方がきっともっと痛い… 「なんでオレの事信じてくれないん!!」 銀の悲痛そうな声がよみがえった 銀は私の事を一番に考えてくれたのに…いつでも信じてくれて優しくしてくれたのに…!! 今日だって私のために買い物に行ってくれてたんだ… あの時床に転がってたピンクゴールドの二本のリングが絡んだような形のリングと「Happy Bthday」と「I Love You」の文字が見えたカードを思い出す いつだって銀は私を愛して大切にしてくれてたんだ… どんどん自分が嫌になっていった 私は銀を信じてあげられなかった自分が、あんな根拠もない写真だけで騙されてしまった自分が不甲斐なくて嫌いになった 腰や体がずくん…と痛む 銀との時とは違う嫌な痛みだった ただただ痛くて苦しい… 汚い… 胸の中でどろどろとした嫌な物が溜まる感覚がした 汚い…汚い…汚い… ホントかどうかも分からないようなことで揺らいで銀を疑って傷つけたんだ… 体中痛くて涙も止まらなかった 自分のしてしまったことが怖くて恐ろしくて… その日は一日中泣き疲れて眠るまでそうやっていた… 「なんで…なんでなん…しずか……」 一晩中銀のあの声が頭の中を巡っていた

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