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思い知れ

ずっと虚しさだけが体の中に残った 前までは静香の事を考えるだけで楽しかったのにそんな気持ちが全部枯れてなくなってしまった 何故かもう悲しいとは思わなくなったけど、なんだか体の中身が空っぽになってしまったようやった その日は寝ることもできずにずっと兄貴と静香のした行為の痕が深く残るその部屋にすわっとった そして朝が来て機械的にシャワーを浴びて制服を着て学校へ向かう 途中で同じ学校の女子がまとわりついてきていつもやったらすぐに振り払うのにそのままにしといた 静香と付き合い始めて以来初めて静香を迎えに行かなかった でも今日は静香がオレに会いに来た オレと同じ不安げな表情でやつれている 「……ぎん…」 「………」 静香の唇が動いてオレの名前を呼んだ 初めて静香がオレの事を『頬付クン』じゃなくて『銀』って呼んでくれた時はめちゃくちゃうれしかったのに今はそう呼ばれるのがすごく苦しかった 先に手を離したのは静香や… 「……銀…」 「………」 静香が再度オレの名前を呼ぶ 呼ぶな…やめろ… 心臓がドクドクなって目の前が暗くなっていった そんな顔するな…そんな苦しそうな顔するな…オレのが苦しいねん… 「………」 「…え…キャー♥」 「ッ!!」 「えー銀くんズルーい!!」 「私も、わたしもー!!」 どんどん目の前が暗くなってきずいたら隣にいた名前も知らないような女子にキスしてた オレは悪くない…静香がしたことに比べれば…こんなこと… キスをせがんでくる他の女子にもキスをした 無駄にグロスでべたべたした唇にキスするなんて反吐が出そうなぐらい気持ち悪い 静香の柔らかくてあったかい唇がすきやった… でも静香に昨日の事のせいでオレが傷ついてるなんて言う風に見せるのが癪でプライドが許さなかった そんなの平気っていう顔を静香に向けるのがせめてもの仕返しやった 静香やって同じ気持ちになればええ…オレがどんだけの虚無感で夜を過ごしていたか知ったらええんや…

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