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銀の過去

そうやって銀は俺を抱きしめたまま消えそうな声で話した ぎゅーっと怯えたように俺にしがみついて何も言わない もしかしたら泣いているのかもしれない 銀の昔の話は思ってたよりも壮絶で正直な意見かわいそうだと思った 銀がぎゅーっと俺をより強く抱きしめる 俺もそれに応えるように抱き返した なんて声かけたらいいんだろう… 気の利いた言葉が思い浮かばなかった するとしばらくして銀が先に口を開いた 「………怖い……」 「………」 ぐずっと鼻をすするような声でいつもの銀と全然違う弱弱しい声だった 「怖いねん…」 「………」 なんて返したらいいかわからなくてとにかく銀を抱きしめ返した なんか…言ってあげないと… 「……ぎん…」 「………」 そんながむしゃらな気持ちで口を開いた でも何の言葉も出てこなかった… 大丈夫…大丈夫だよ… そう言いたかった 口に出さないと…言ってあげないと…!! 「……だ…」 「………」 「だい…じょ…」 「………」 自分でも何を言っているのかわかんなかったけどとにかく何か言わないとと思った え、と…あと… でもどうしても言えなかった だって全然大丈夫じゃないだろ… 俺が銀だったら…もし銀に信じてもらえなくて…銀が別の人にとられちゃって…それが面白半分の遊びみたいなので…しかもその面白半分で自分の体まで良いようにされたりなんかしたら… それが…実のお兄さんだったら… 真っ暗だった… 俺には兄弟はいないけど今にも叫びそうになるぐらい苦しい… 銀はそんな苦しさや悲しさに耐えてたんだ… 必死に縋りつくみたいに俺をきつく抱きしめる銀を見て思う それをそんなこと体験なんてしたことのない俺がどうこう言っていい問題じゃないんじゃないか? 大丈夫なんてそんな無責任な事言っていいのか? 銀は静香さんと別れてからずっとそれに苦しんでそれでやっと気づけたと思ったらお兄さんにそんなひどいコトされて…それで俺とあって… でもその悩みの元だった静香さんが今銀とあったそういうことすべてひっくるめてでも銀とよりを戻したいって言ってる… ……俺なんかより静香さんの方がいいんじゃないか…?

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