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好きな人にとって

その日の夜はずっとそうやってた 俺にしがみつくような銀を抱き締めていた でもそれでも俺は何も言えなかった… 考えがまとまらなくてずっと同じことが頭の中でグルグルしてた 銀がこんなに悩んで苦しい思いをしてそれでも好きだった静香さんが銀のしたことすべてを許して今も銀の事が改めて好きだと言って銀に会いに来た 今まで俺がずっと劣等感を抱いてきたものは 女じゃないとか、かわいくないとかそういうものだったけど銀はそれでも俺がいいって言ってくれた それが唯一俺が周りの銀の事が好きだという大勢の人間に対して差をつけていたもので安心材料だった… でも静香さんが現れた 銀の愛も受け、女の人で、かわいいし素直だし素敵な人だった しかも銀と同じ苦しみに3年間耐えてきたんだ… だったらきっとこれから先銀とどんな事があっても銀の事を信じるんだろうし前と同じような事にはならない… 銀だって銀が苦しんだ失敗をしなくて済むんだ 今までの自分を見返す きっと俺はこれからも銀に迷惑かけるし、素直じゃないからそのことがわかっててもきっと繰り返す 女じゃないから銀と…その…け、結婚…とかもできないし子供も産めない… 将来的な事を考えると銀は俺といて良いコトが全くと言っていいほどない… そんな事を銀にしがみつきながら一晩考え抜いて外が明るくなってきた時 銀が口を開いた 「まな…好き…」 「………」 銀が「怖い」と「うん」以来初めて言った言葉だった 「好き…」 「うん…」 「大好き…」 「………俺もだよ……俺も大好きだよ…」 ぎゅっと銀の背に回す手に力を入れた 俺は銀が好きだ… 銀がすりすりと俺に体を擦り付ける こんなに弱くなってる銀を初めて見た そして…静香さんも銀の事が好きだ… 前公園で話した時の静香さんを思い出した 銀にとって…俺の好きな人にとって一番いいのは… 最後に以前俺を好きだと何度も何度も言いながらも大泣きして俺に別れを切り出してくれた人の事を想いだした ………俺は銀の事が好きだ… でも俺は銀の痛みをわかってやれない… 声を掛けてやる資格がないんだ… そして口を開いた 「銀…ちょっと考えさせて……」

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