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裏切り者
志波がオレに見せたのは地図みたいやった
「ここのね、608号室にねお兄さん泊まってるよ」
「………」
「毎日いろんな女の子連れ込んで楽しそうだったよ?俺も混ぜてって頼んだんだけどフラれちゃった」
「………」
志波がこっちに近付いてきて目の前で止まる
初めて志波の目をちゃんと見た
透き通るような青でそれだけはきれいやと思った
「俺ね、思ってたより銀くんも学も好きみたいなんだ」
「………」
「お兄さんがね、学に飽きたら俺に譲ってくれるって言うからいいかなって思って協力してたの…」
「………」
「銀くんの家教えたりしたのも俺なんだ」
志波はそうやって淡々と話し続けた
いつもの胸糞悪い笑顔やったけど少しさみしそうやった
「でもね、学の事好きだから学が傷つくの嫌だし、将来的な目標は銀くんと学の間に挟まることだから銀くんと学がぎくしゃくするのはいやだなって思ったの」
「………」
「だから裏切るね」
そう言うと志波からメールで地図が送られてきた
本文に『I Love You♥』って書かれてた気がするけど無視する
「ホントはね、学行かせないようにしようと思ったんだけどね無理だった」
「………」
「学ね自分から行っちゃったんだ…」
学が自分から…?兄貴と…?
ちょっと胸が痛んだけど志波の次の言葉を聞いてそれは消えた
「銀くんのためだよ」
「……は…?」
「きっと学、自分でも気づいてないけど銀くんのためにお兄さんと話をしようと思ってるんだと思うな」
耳を疑った
まなはオレに愛想尽かしたわけやなかった
志波はそう言うとふっと小さく笑った
「ほら、もう行きなよ?きっとお兄さん、人の話とか聞かないタイプだと思うんだ」
「………」
そう言うと志波は満足したらしくオレの横をすり抜けてどこか行こうとした
「あ、そうだ、情報料はこれでいいよ」
「!!」
すれ違いざまに志波にグイッと肩を引っ張られて頬に柔らかい物が触れた
「銀くんの呆けた顔、なかなかcuteだったよ♥」
そう言って志波はいなくなった
その場に立ちすくむ
いろんなことに驚いたけどまずはまなや…
志波から送られてきた地図が表示されるスマホをギュッと握って再度走り出した
少し志波は良いやつかもわからんと思ったなんて絶対言わん
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