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開戦
「入って?学くん」
金さんに連れてこられたのはホテルの一室だった
普通のきれいな旅行者の宿泊用ホテルでそういう如何わしい感じもなかったからとりあえずホテルの中には入ったけどやっぱり個室に入るのは気が引けた
金さんはニコニコ笑って片手でドアを開け片手を俺の背中に沿えている
やっぱり少しこの人は怖い…
「………」
「どうしたの?何かオレと話したいんじゃないの?」
「………」
金さんはそう言ってちょっと強引に部屋にオレを引っ張った
「ちょ…まだ俺入るって言ってません!!」
「あれ?帰るの?」
「………部屋には…入りたくありません……」
始めは銀のためにと思って意気込んでいたけどいざ周りに人気が少ない場所になると少し怖かった
だけど金さんを見た感じ無理やりどうこうしようとは思ってないみたい…
「………」
「………」
お互い黙ってしまって静かになる
金さんは部屋のドアに寄りかかったままニコニコ笑ってた
「別にここで話してもいいよ?でも逆にこんなとこで話していいの?二人っきりの方が話しやすいんじゃないかなぁ…」
「………」
グッと唇を噛んだ
そうだ…銀の話だし…軽々しく人に聞かれて平気な話でもない…
どうしよう…
悩んで視線を泳がせると金さんはこれ見よがしにとドアを開いて中に入ろうとした
わざとらしくため息をつく
「残念だね、オレは弟の友達とお話ししてみたかっただけなんだけど学くんがいやなら…じゃあね」
「ま、待ってください!!入ります!!」
焦ってとっさに金さんの閉めようとするドアのノブを握ってしまった
金さんがニヤッと笑った気がした
「……どうぞ?」
勝ったような笑顔で俺を見てる
失敗したと思った
でもここでやっぱり…なんて言おうものならきっと話させてくれない…
ギュッと唇を硬く結ぶ
……今度はオレが銀を守るんだ…
「……お邪魔します…」
そう言って俺は部屋に入った
後ろでバタンっと締まる扉の音がやけに大きく聞こえた
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