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上と下
学くんはずっとオレの事を見ようとせずいうことも聞かなかった
だんだんイラついてくる
そんなにあいつがいいか…
顔も、声も同じなのに…なんで皆あいつばっかり…
「ち、がう……」
違わない…
「同じじゃ、ない…」
「うるさい!!」
「!!」
学くんはビクッと震えて目を丸くしてオレを見ている
俺もアイツも大して変わらない…むしろオレの方が勉強もできた、運動も音楽も芸術でもなんでもオレの方ができた…なのに…
ずーっとそうだった…
始めは何だったか…親戚の集まりかなんかで小さいときに両親と銀とたくさん親戚が集まってるとこに連れてかれた
その時俺は小学校に上がるか上がらないかぐらいで銀は3歳とか4歳とかかわいい盛りの時で親戚はそろって銀をかわいいかわいいって褒めた
オレも年の少し離れた小さくてふわふわした弟が可愛かったしそんな弟にお兄ちゃんって呼んでもらえるのが嬉しかった
でもそれと同時になんだかもやっとしたものを感じた
嫉妬だった
その時オレは初めて銀に嫉妬した
別に親戚に邪険にされたとかそう言うわけじゃなかったけどみんなが銀ばっかりかわいいっていうからやきもちを妬いて不貞腐れたんだ…
その時はその程度だった
そして銀が小学生になってそれは余計強くなった
オレの方が勉強も運動もなんでもできた
県のコンクールで絵が表彰されたりしたこともあった
なのに皆銀の事を気に掛けて可愛いって言った
親戚も、両親も、同級生や先生なんかも…やっぱりみんなオレに悪意があったわけじゃなくて単純に銀が可愛かったんだ、やっぱりオレが邪険にされたわけでもない
年下ってだけなのに…
そう思った
そのころからオレは銀に意地悪するようになった
意地悪って言っても銀のおもちゃを横取りするとかそんなレベルだったけどそのたびに銀は泣いてオレは両親にそれなりに怒られたけどなんだかスッとした
銀は何も悪くなかったけど、しかえしでスッとするとかそう言う感覚だと思う
オレの方が何でも『上』だったのにみんなが銀を『上』扱いするのを不満に思っててそんな銀を泣かせたことで銀が『下』だって示せたような気になったんだ
でも銀はそれで泣いてもみんなに心配されて可愛がられてすぐにこにこしてオレにお兄ちゃんお兄ちゃんって寄ってきた
するとまたいやーな気分になってまた銀を泣かして親に怒られた
そうしてオレも銀も大きくなって銀も可愛がられるなんて年じゃなくなってオレも意地悪をしてスッとするなんて年でもなくなった
そこで終わってればオレの意地悪も上の子が下の子に嫉妬するってレベルのものだったんだ
オレは家を出て自立して適当に女作ってたのしく暮らして、その間に銀は静香ちゃんなんて彼女ができた
お互いにお互いが大好きで何もしてなくても一緒にいるだけで楽しい…
帰ってきてそれを聞いた時、なんだか昔と同じ嫌な気分になってまた銀を泣かせたくなった…
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