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海パン泥棒
ぱしゃんと水しぶきがあがって顔にしょっぱい塩水が掛かった
「ぷはぁ!!」
黄色いアヒルの浮き輪で顔だけ水に入れて遊んでた健斗が俺のすぐ横で頭を上げてブルブルっと犬みたいに頭を降って水をはね飛ばしてた
ゴーグルを外してやっと気づいたのか俺を見つけてにへーっと笑う
「水かかるから頭振るなよ…目の回り、ゴーグルの痕ついてパンダになってるぞ」
「わーい!!見て!!ヒトデ!!」
「うわぁぁぁ!!やめろ!!裏側をこっちに向けるな気持ち悪い!!あと人の話聞け!!」
「えへへ~」
よっぽど楽しいのか俺がちょっときつく注意してもえへえへと笑顔が収まらない
健斗…泳げないから生き物の多い沖の方いけないけどここ浅いのにいろんな生き物いるから楽しいんだろうな…
健斗は俺と一緒に小1から小6までスイミングクラブに通ってたのに最後の最後までひとりで泳げるようにはならなかった
なぜか浮き具がないとひとりでにブクブクと沈んでいく…
(似てると言われた某水泳アニメの彼は腕が伸びるほどの迫力で泳げるのに)
だから健斗は昔からプールの授業や海行くの嫌いだったっけ…
いっつもむすーっとして水辺に座ってた記憶しかない…
「あのねー今からコレ猛の背中に張ってくるの」
「…うえっ…考えただけで気持ち悪い…」
「猛向こうで寝てるの」
そう言って健斗が指差した方を見ると砂浜に敷かれたマットの上にうつぶせに猛が寝てその横で辻くんが一生懸命大きなパラソルをしまおうとしてるのが見えた
ついさっきまで泳げない健斗を心配して猛も海に入ってたけど疲れてそうだったから休んで来たらって言ったんだった…
ここくるために別の日にバイトのシフト多めに入れてたとか言ってたもんな~…やっぱり疲れてたのか…
って言うかなんで辻くん猛寝てるのにパラソルしまおうとしてるんだろう?
「ふふっ、あとで学にも見せてあげるね!!」
「おお?」
そう言って健斗と話してるうちに後ろからすーっとピンク色の藻みたいなのが中心にいる浮き輪が俺の背後に近付いてた…
「まー、なっ」
「うわっ!!」
ざばっとまた派手な水しぶきを上げて今度は銀が俺の肩に首をまわしてきた
水で軽くなってるとはいえ銀がべったりくっついてくるとさすがに重い…
び…びっくりした…ていうか…
腰に変な違和感を感じてそっと手をやってみた
な…ない…!!
そしたらやっぱりそこにあるはずの水着が無くなってた
…銀…!!
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