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忘れ物
「わーい!!しんかんせーん!!」
「先輩、ちゃん脱衣所に干してた水着持ちました?あ、あと歯ブラシと…枕元に置いてた目覚まし時計と…あと…」
「持ったよ!!」
「………新幹線の切符と…スマホの充電器とか…」
「持った持った!!」
先輩が早く行こうよぅとオレの手をドアの方へ引く
美香も大概「大丈夫大丈夫」って言っては部活の大会先にしょっちゅう忘れ物をしては取りに行ってた…
大丈夫って言う人が一番忘れ物する…
でも先輩はしつこく言ったからか忘れ物をしてる感じはしなかった
心行くまで調べてから最後の荷物をバッグに詰めてせっかくきれいにしたベットの上で足をバタバタさせてる先輩を降ろして再度ベットをきれいにする
「お待たせしました、行っていいッスよ先輩」
「わーい!!」
「………」
先輩はオレが言い終わらないうちに駆けだしてばたーんっとドアを開けて部屋を出て行った少し遠くから『わーかばちゃーん!!』なんて声が聞こえる…
ホントに仲良くなったんだな…
嬉しいようなちょっとさみしいような気持ちになる
はぁっと軽くため息をつきながらバッグを肩に掛けて開け放たれたままのドアへ向かった
…………楽しかった…な…
紺庄先輩はもう高3…充分に受験生だ
先輩と進路とかそういう話はあんまりしないけどでもきっと受験するだろうし…そしたら先輩は勉強を優先するべきだ
お世辞にも先輩の成績は志波先輩や頬付先輩みたいに良いとは言えないし学さんにも程遠いから頑張らないといけない
それぐらいの分別はつくし昔から『物わかりがいい』と『我慢強い』とだけは褒められてきた
……ちゃんと…先輩のために………
フッと笑って顔を上げるとちょうどオレらの部屋の前を頬付先輩と学さんが通るとこだった
頬付先輩が学さんのバッグを持ってあげて学さんは頬付先輩の腕にしがみ付いて痛々しくよたよた歩いていた
頬付先輩がオレに気づいてフンッと鼻で笑う
もう腹も立たなかったけどなんだか少し羨ましかった
でもまぁ…年齢なんて仕方のないことだし…
後から思えば自分にそう言い聞かせてたのかもしれないけどその時はそう自分の中に落として頬付先輩たちの後に続いた
「あ!!忘れた!!」
「!!」
そう聞こえたと思ったら何かが横を通り過ぎてってそのまま後ろに手を引っ張られた
「ちょ、先輩!?」
「忘れた!!忘れ物!!」
「せ、先輩持ったって…」
「それも忘れてたの!!」
オレの手を握ってるのは先輩だったぐいぐいさっき出たばかりの部屋に引っ張られる
頬付先輩たちは「はよしや~」とか言ってそのまま行ってしまった
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