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番外編 ハッピー?バレンタインデー⑧
アイツはいつ来るのだろうか。
そろそろか?一時間後か?もう来るか?などと考えて既に時刻は午後8時半。
一向に来る気配がない。
何度か確認したが特にメールや電話もなし。こんな時間だ、流石にもうここへは訪ねて来ないだろう。
俺は会社での作業を諦め、仕事を持ち帰ることにした。
周りに人がいるとやはり少し落ち着かないし。
(…それにしても…結局、会いに来なかったな…。…彼方……)
データをUSBに移しながらそんなことを考える。
チッ、チッ、チッ、……アナログ時計の秒針の音が妙に頭に響いた。何だか少しだけ痛い気もする。
デスク回りは散乱し、まるで今の俺の頭の中を表しているようだ。
先程淹れたコーヒーも、こんな気分ではあまり旨いとは思わなかった。
(会いたい…な。)
今日何度目か知れない溜め息が溢れた。
一昨日会っているのに、いよいよ俺も末期かもしれない。
たった一日二日会えないだけでこんなにも恋しく感じるなんて…俺はアイツに、柄にもなく相当ハマってしまっているらしい。
高校生の言動ひとつで一喜一憂している自分が悲しいやら情けないやら…
(大人としてどうなんだ、これは?)
「ん~ッ……、帰るかぁ。」
やめやめ。考えたってこればっかりは仕方ない。
好きになってしまったものはどうしようもないのだから、精々彼に振り回されるより他はない。
俺はぐっ、と伸びをひとつして同じ体制のせいで固まった腰と肩を労りながら家路についた。
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