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番外編 ハッピー?バレンタインデー⑨
「は!?なんでいんの!?!?」
「何だよ、俺 会いに行くっつったじゃんか。遅ぇよオッサン。」
会社からの帰り道。途中のコンビニに寄って晩飯買ったりコーヒー買ったりしていたら、自宅に着く頃には結局午後9時を回っていた。
疲労と多少のイライラで重くなった身体を引き摺り、やっとのこと辿り着いた玄関。
するとそこには、つい先程まで俺が会いたいと望んでいた人物の姿があった。
遠目でもわかる程 電灯の光を反射してキラキラと光る見慣れた金髪と耳飾り。ドアに寄り掛かってスマホをいじる横顔は相変わらず美形としか言い様がない。
珍しくマスクを顎辺りまで下げてつけているので今日は顔がよく見えた。
一度家に帰ったのだろうか、制服ではなくとてもラフな格好でそこに立っている。
すると足音に気付いたソイツが手元から顔を上げ、こちらに視線を向けたのでバッチリと目が合った。
そして冒頭の言葉に繋がるわけだが……
(彼方……彼方だ…)
そう認識するや否や、俺は手に持っていたコンビニ袋を放り出し早足で彼方の側まで行くと、その勢いのまま彼方を抱き締めた。
「うっわッ!なに!!」
急な出来事に驚いて少し仰け反った彼方のその肩口に顔を埋めて息を吸い込む。多少変態臭いのは許して欲しい。
あ"~…彼方…、彼方だ…。
俺は引き剥がされないのをいいことに、その体制のまま すりすりと頭を彼方に寄せて話をした。
「…俺はてっきり、会社に来るのかと思ってたんだよ…そしたらお前 放課後んなっても会いに来ねぇし、連絡も来ねぇし、今日はもう会えないもんだとばかり…」
「…いやそれは、」
「したらお前帰ってきたら玄関の前で待ってるし、なんかすげぇ薄着だし。風邪引いたらどうすんだよバカなのか?待ってんなら早く連絡しろよな、こんな遅くまで一人で危ないだろ…」
そう一息に言えば「……よく喋るな。珍しい。」なんて気の抜けた返事が返って来て、背中にそっと手が回された。
「おい、そうじゃないだろ。」
「大丈夫だよ、遅くまでって言ったってまだ9時じゃん、一応ここ屋内だし。それに薄着に関してはもうちょっと早く帰ってくると思ってたんだよ、仕方ないだろ。」
「遅いと思ったら連絡しろよ、そしたら俺だってもう少し早く…」
「それは嫌だ。」
「はぁ?」
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