5 / 34
お泊まり。
「おいオッサン。」
「なんだよ。」
「なんだよじゃねぇ、邪魔だ。」
「邪魔だとこのクソガキ、折角俺が冷えてるお前を温めてやってんのに。」
「嘘こけこのセクハラ親父!!ひとの服ん中に手ぇ突っ込む必要がどこにあんだよ!!!逆に冷てぇだろーが!!!」
ここは俺、日向 明日香の自宅のリビング。2Lkのマンションでそこそこ広いこの部屋に、ほぼ毎週末 彼方が泊まりにやってくる。
午前10時過ぎ。朝食も食べ終わり、今はソファーとテーブルの間に彼方が俺に寄り掛かるような体制で座っている。
「暇。」
「知らねぇよ!俺は暇じゃねぇの!!」
「何してんだよ。」
「見りゃわかんだろーが、勉強だよ!!べ、ん、きょ、う!!」
だから邪魔すんなよ、と彼方がテーブルに向き直る。
えー、何でコイツ見た目こんな(※1ページ参照)なのに、成績優秀のくそ真面目なわけ?
まぁでも、やるなと言われればやりたくなるのが人の性というもので、
俺は彼方の服の中に未だ潜り込んでる手を動かし始めた。
「ちょ、テメェ……ンッ!」
へその周りをくるくるとゆっくり撫でる。
「くすぐった…フッ、クッ…」
手から逃れようと身を捩る彼方を押さえ、尚も手を動かし続ける。
「マジ、やめろっ、て…オッサ、ぁあッ!!」
「ほらほら、勉強に集中してー。」
「ハァッ…ハッ、ほんとに、もっ…」
心なしか息も荒くなってきている。
「やめろって…、言ってんだろーがッ!!!!」
「ごふッ!!!」
叫ぶと同時、彼方の後頭部が俺の顎にクリーンヒット。
「舌噛んで死んじまえ!!!」
捨て台詞を残し、彼方は寝室へ閉じ籠ってしまった。
「おぅッふ…、彼方のヤロォ……」
仮にも恋人に頭突きはねぇだろ…歯折れるかと思ったわ!
俺は顎を擦りながらキッチンへコーヒーを淹れに行った。
(この間は泣かせちまったから、今日は構い倒してやろうと思ってたのに)
なんだよクソガキが、ほんっと可愛くねぇな。俺が拗ねてやろうか?ったく。
「チッ!!勉強ぐらいどこでもできんだろ…!!」
そう言いながら煙草に火をつけ、換気扇を回す。
ツンデレめ、折角の休みなんだからさっさとデレろよ!!
そもそも彼方はツンが多すぎんだ!!ツンツンツンツンしやがって、デレが1割もねぇじゃねぇか!!!
…後で覚えてやがれ、涙でぐしゃぐしゃのどろっどろにしてやるからな。
俺はプハァッ…と煙を口から吐き出しながら、一人
「あー…、早く夜になんねぇかな…。」
と呟いた。
ともだちにシェアしよう!