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お泊まり。③

「彼方、おきてるか?」 「んー……」 あのあと俺は彼方が相手をしてくれないので、仕事を終わらすべくパソコンとにらめっこをしていた。 それも粗方片付き、現在の時刻は午後9時37分。 彼方はテレビの前のソファに体を預け、ぼーっと画面を見ている。 なんだあいつ、すごい眠そうだな。 「彼方、ねむいのか?」 「んー…、なにぃ……?」 「だから、眠いのかってきいてんだよ、かーなーた~?」 返事はしているもののどこか虚ろな感じだ。 頭が若干ゆらゆらと揺れている。 「んー?ねむい?ん~…暑い。」 「え、何で?」 いま冬だぞ、暖房…はいつも通りだし、風邪でも引いたのか? 「彼方?」 俺は少し心配になり彼方の近くに寄っておでこを触る。 熱は…ない、な。 「ンッ、な~…おっさーん」 しばらく掌で額や頬、首の後ろに触れていると、それが気持ちいいとでもいった風に目を細めながら彼方が声を掛けてきた。 「ンだよ、どうした?辛いのか?」 彼方の頬は少し赤らみ、呼吸も荒い気がする。 やっぱり風邪か? はぁ、折角今日は久々に彼方と…と思ってたのに… 何なんだ、俺マジでついてないな… 「ンや…なんかフワフワする…」 フワフワって、本当にどうしたんだコイツ。 ん?まてよ、まさか… 「彼方、お前さっき何飲んだ?」 「んー?それー。」 力の入りきっていない手で指差したグラス。 それを手に取り一口含むと、仄かにだがアルコールの香り。 「…お前、酒飲んだな?」 「アハハ、バレた~?」 ヒラヒラと手を振りながら彼方が笑う。 「あのなぁ、バレたじゃないだろ…何で酒なんて飲んだんだよ。お前弱いっつってたろ。」 未成年ってところはあえて触れない。俺もひとのことは言えないからな。 「んー…だからのんだー。」 「はぁ?」 さっぱり意味がわからん。 俺さー、と彼方が俺の肩に頭をぐりぐりする。 「素面のままだと はずかしくて、その、ぇ…えっち…できないから……」 そう言いながら、右手の人差し指をぎゅっと握られる。 俺の肩口で俯いていて彼方の表情は見えないが、耳や首筋が赤く染まり金色の髪がそれをサラサラと見え隠れさせていた。 ……、マジかよ…!!! 「…勉強はもういいのか?」 「もういい…」 「俺と したくないんじゃないのか?」 「何でそうなんの」 「だってお前、俺が誘ったとき嫌がっただろ。」 「それは…!!」 未だ俯いたままでモゴモゴと口ごもる彼方の手に力が入ったのがわかる。 「それは、ぁ、あんな時間からやったら、おれ 、がまんできなくなる…から」 「勉強しなくなる…」なんてそれはもうお前は林檎かってくらい真っ赤になって言った。 ほんとコイツ… いつもこれくらい素直ならな…。 「彼方…」 「な…に……ンッ!!」 彼方の正面に回り込み口から少しずらした所にキスをする。 「……したい?俺と。」 「…ッ、そ…んなの……」 「うん…?」 何度も繰り返し…繰り返し…頬、鼻、首、チュッ…チュッ…と唇を落としていく。  「んッ、なぁ…やだぁ……」 「いや?やめたい?」 「そうじゃない……」 「何?」 キスを続けながらなるべく優しく話し掛ける。 「どうしたいのか、ちゃんと言え」 彼方の目が心なしか潤んでいるようにみえる。 「……く、ち………。」 「うん?」 「口にして、キス…」 チュッ…とやっと口にキスをする。 「他には?」 「したい…」 「うん…」 「あ、すか…、と、したぃ…」 「よくできました…」 それからもう一度触れるだけのキスをして、俺は彼方を抱えて寝室へ向かった。

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