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ばれました。~幼馴染み編~

これは、とある休日の話。 俺たちはいつも通り俺の家でテレビをみたり本を読んだり、他愛もない会話をしながらしばらくの間のんびりしていた。 そしてそろそろ昼食を作ろうと思い冷蔵庫を開けると、中身は見事に空。 仕方がないから二人で食材を買いにスーパーに向かった。 そう、近くのスーパーに。 今思えば、何故アイツに会うことを想定していなかったのか、あのときの俺を呪いたい。 駅前大通、自宅から車で十数分の所にそこそこ大きめのスーパーがある。 ある程度のものならここで揃えることができるため、重宝させてもらっている。 「オッサン」 「何だよ。」 「何でスーパー?どっか食べに行けばいいんじゃないの?」 彼方が精肉コーナーを見ながら言う。 「そんなに贅沢する金はありません。オッサンは安月給なんだよ。」 「ケチだな。」 「金がねぇんだつってんだろ。」 「じゃあ今日はハンバーグがいい。肉が食いたい。」 「いや、俺は餃子が食べたい。」 「えぇ、我が儘なやつだな。」 「どっちが。」 「なら両方作ろうぜ。」 どうせ材料殆ど同じだろ。そう言って挽き肉を選ぶと、彼方は野菜コーナーへ歩いて行った。 (こうしてみると、アイツ主婦みたいだな。いや、主夫か?…金髪マスクのヤンキーだけど…。) かごを持って食材を吟味している彼方。 なにやら野菜とにらめっこをして鮮度を確かめているようだ。 その後ろ姿を見ていたら、何だか少し暖かい気持ちになる。 一人で買い物をしていた時は特に何も思わなかったが、やはり誰かと食事をするために買い物をするのは楽しいもので…。 何とも言えないむず痒さに少し浮き足だっていた俺は、背後に迫る影に気付くことができなかった。 「明日香、今日は二人で作ろうぜ。その方が早いし。俺もう腹減って死にそう。」 「なに、手伝ってくれんの?珍しい。」 「…一人で作りたいんならどうぞご勝手に。」 「嘘です。二人で作りましょう。いつも手伝ってくれてありがとうございます。」 「よし。あ、そういえば調味料は家にあったっけ?」 「たぶん。あぁでも、あんまり洒落たもんはないぞ?」 「洒落たもんってなんだそれww」 「いや知らんけど。洋食で使うようなのじゃね?」 「アバウトだな?今日のは和風にするから大丈夫だよ。餃子も作るし。」 「和風?おろしにしようぜ!おろし!!それか梅!」 「えー俺はデミグラスソースがいいなぁ~」 「は?どっちだよ?」 「だからおろしか梅だって」 「ハンバーグと言えばデミグラスでしょ?」 「や、だから和風に…え?」 「え?」 「「え?」」 「?どうしたの??」 「おっ、お前!?」 「????」 「よっ!!」 幼い頃から聞きなれた声、少し間延びした柔らかい喋り方、 そして如何にも人の良さそうな顔。 「秀一……」 そう、俺の幼馴染み長谷部 秀一である。

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