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ばれました。②~幼馴染み編~

「昨日ぶり~」 「ホントにな…。」 しまった…忘れてた。 こいつもよくこの店に来るんだった。 クッソ、違う店にするべきだったな… 「あ、明日香……?」 彼方が困惑した表情で俺を見つめてくる…どうするべきか 「ん?あぁ。初めまして、俺は長谷部秀一です。日向さんの職場の同僚だよ。君は…?」 (日向さん…) 聞き慣れないその呼び方になんだか違和感を感じる。 「あ、永井彼方です。初めまして。」 「よろしくね~」 秀一は彼方の手を取り握手をすると、ニコニコ、いや、ニヤニヤしながら俺と彼方を交互に見てくる。 「や~それにしても、あの明日香がねぇ~…」 「止めろ、そんな顔でみるな。 お前の言いたいことは分かる。だが今は放っといてくれ。」 「えー?」 ブーブーと大人気なく口を尖らし明らかに不満を表す秀一。 「俺もハンバーグ食べたいなぁ?」 「お前の分はない。さっさと帰れ。」 「お金はちゃんと払うよ?」 そういう問題じゃない!! 「駄目なものは駄目だ!!」 仕様がない、ここは一旦引こう。 「頼む、来週また改めて話すから、見逃してくれ。ボソッ彼方、逃げるぞ。」 「えっ?」 そう言うと俺は彼方を引っ掴み一気にレジまで爆走した。 「ちょッ、二人とも!?!?」 それはもうまさに脱兎の如く。 その後は秀一に追い付かれる前に会計を(店員を物凄い形相で睨んで)早く済ませ、車に飛び乗るようにしてその場を走り去った。 はぁ…何とか逃げ切れた。 (しかし、まいったな…) しばらくの間は彼方のことは隠しておくつもりだったのに、こんなに早くバレてしまうとは。 どう説明するべきか…。 恐らく秀一は俺たちの関係に気付いているだろう。 いいや、心配なのはそこじゃない。 (誤魔化すべきか、でも…) 車の中でそんな事を考えていたら妙に隣が静かなことに気が付いた。 「彼方?どうした。」 「…別に、何でもない。」 信号待ち、いつもより落ち着いた口調の彼方を横目に見やる。 俯いているせいで伏せられた睫毛が影を落とし、その中で瞳が心なしか揺れているように思う。 「そんなわけ無いだろ、急に黙りこくって。俺に言い辛いことか?」 「……………」 「彼方?」 彼方は足元を見つめたままゆっくり口を開いた。 「…………さっきの、」 「……………」 「長谷部さん?…にバレたの、嫌…、だった?」 「え、」 「俺たちが、その、付き合ってるって…」 「…ッ!!」 遠慮がちに向けられた彼方の瞳が今にも溢れんばかりに潤んでいる。 思わずドキリッと疼いた心臓に ププーッ!!! けたたましいクラクションの音が響き、慌てて車を発進させる。 (危ない危ない。この場で襲うとこだった……落ち着け、俺。) 「明日香は知られたく、なかった?」 未だドキドキと鳴り響く胸に若干震えた彼方の声が届く。 俺が彼方とのことを人に知られたくない、隠したい関係だと思っていると勘違いしたのか…。 「違う。彼方、そうじゃない。」 再び赤信号で車を止め、彼方の方を向く。 「秀一にバレたくなかったのは、知られたくなかったからじゃない。」 「え…?」

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