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ばれました。⑤~幼馴染み編~

「あの」 彼方の少し大きな声が室内に響く。 「俺、分かってますよ。長谷部さんが言いたいことも、これからのことも。」 秀一も俺も黙ったまま彼方を見つめた。 「俺は男で、しかもまだ高校生で、自分一人で出来ることなんて限られているし、周りに隠さないといけないことだって山程ある。そういうのが重荷になって辛くなったりして、何度も明日香に八つ当たりして迷惑かけて…これからもきっとこういうことはあるだろうし、大人に成ればまた違った問題も出てくる…」 「でも、」彼方は静かな、けれどはっきりとした口調で続けた。 「でも、それって男同士だからとか未成年だからとかに関わらず、それこそ普通の恋人同士でも問題は少なからずあると思うんです。だから、その、 長谷部さんが心配して下さっていることも分かってる、つもりです。 けど、俺はそれを理由にして逃げたくないというか、そういったことにも向き合いたいというか…えっと、つまり……」 緊張しているのだろう。 最後の方は何が言いたいのか分からなくなってしまったようで、あー…うー…と中々言葉が出てこないみたいだ。 すると今まで黙って聞いていた長谷部が口を開いた。 「……彼方君はさ、なんで明日香と付き合ってるの?」 「え…!?」 「君が言った通り、コイツは男だし自分よりも年上でしょ?周りからどんな目で見られるかなんて明白じゃない?」 「………………」 「…今の世の中減ったとはいえ差別や偏見は絶対にあるよ。 …俺はね、明日香には幸せになって欲しいんだよ。だから出来ればわざわざ辛い道を選んで欲しくない。 勿論君のことだってそうだ。」 「後で苦しむのは君たち自身なんだよ。」秀一も彼方も互いに目を逸らさずじっと相手を見ている。 手元のコーヒーはすでに湯気が消え、冷めてしまっていた。 「……正直、何でと言われると、よく分からないです。」 おい。 「ただ…、好き…だから、出来ることなら一緒にいたい。」 「………………」 「…明日香が…俺のことを嫌いになるまでは、俺は誰に何と言われようと、…傍にいます。」 「……一般的に言う普通の道よりも、辛いことの方が多いと思うよ。」 「俺は、明日香と離れる方が、辛い…。です。」 「……………」 二人とも喋らなくなり、再び部屋に静けさがやってくる。 「……おい、明日香。」 秀一が今度は俺に声を掛けた。 「…なんだよ。」 「お前は、どうなんだ。」 「……………」 「大丈夫なのか…。」 いつになく真剣な顔の秀一。 彼方は手を握り締めて俯いたまま動かない。 「……………幸せだよ。今も、今までも。 きっと…いや、これからも、絶対に。」 「……そうか。」 そう言うと秀一はコーヒーを飲み干し立ち上がった。 「帰るよ。邪魔して悪かったな。」 「あぁそうだな。」 「ハハッ、そんなことないとか言えよ。」 「ホントのことだしな。」 「えぇー」 俺も立ち上がり二人で玄関へ向かった。

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