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番外編ハッピー? バレンタインデー②
と、思ったはいいものの。
今日は水曜日…つまり平日だ。
当然彼方は課題があるし、俺も仕事が残っている。まぁ俺は編集だから基本はあまり平日や休日は関係ないが、彼方は違う。
流石に学生の邪魔をするわけにはいかないので、大人しく今日は帰ることにした。
…彼方がその気じゃないし。
「はぁ…」
思わず溜め息が出てしまった。
何度でも言うが俺は彼方がこういう性格だというのを分かっているし、それを否定するつもりもない。
そもそも俺もイベント事とかそう言ったものを気にする性格ではなかったはずだ。
だが何故だろう。彼方が絡むと、どうしてか期待をしてしまう。
柄にもなくそわそわしてしまう。
(最近自分が乙女化してきてる気がしてすごく嫌だ…。)
恋というのはこんなにも人を変えるのか…
もう一度、隣を歩く彼方を見た。
歩く度にさらさらと揺れ動く髪は金色に染められ、その隙間から覗く耳にはいくつものピアスが付いている。
マスクと長めの前髪で顔はほとんど見えなかった。
(……好きだなぁ……)
いつも無愛想で口も悪く、見た目もいかにもヤンキー。だがその割には頭も良く、なんなら学年一位も何度もとる程 案外真面目な性格をしている。
変なやつ。
そんな変なやつを好きな俺も変なやつ。
(……やっぱりチョコ、欲しいな…)
週末はくれるだろうか……とか考えてみたり。
…まぁくれないだろうな。
別にいいけど。
「はぁ……」
また吐き出された白い溜め息が、空に滲んで消えていった。
「………………、」
そんな俺を彼方が見て何やら考え込んでいたなんて俺は知らない。
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