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第7話
何か飲むか。とキッチンに行ってコーヒーを淹れてリビングに戻ると、さっきまでソファーに座っていた八神が窓に寄ってボーッと下を眺めていた。
ここから見える八神の横顔はとても暗くて何を考えているのかが気になる。けど無闇にそれを聞くのはどうなのかと思い、聞くことはしなかった。
「おい」
「んー?」
「コーヒー飲むか?」
「飲む飲むー!」
テーブルに寄ってきた八神はさっきまでの表情とは違い、明るいものになっていた。けれどその表情はあまりにも貼り付けただけのものに見えて。
テーブルにカップを置いて八神の髪にポン、と手を置く。
「…何?」
「そんな顔しなくていい、笑いたくないなら笑うな」
「…何言うてんの?」
「無理に笑うなって言ってる」
「……ふふ、やっぱり面白いな、早河さん」
そう言って席に座り、コーヒーのカップに口をつける八神。
動作がひとつひとつ綺麗で、こいつはどこかいい所の出なのだろうか。
「そんな見んとって、早河さんのこと好きになってまうやろ」
「……は?」
「嘘やってー!そんな本気な顔しやんといてや」
こいつ、何故かとても腹が立つ。
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