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第9話
車で八神の言う学校まで送ってやる。
いかにも不良校なそこ、八神が車から降りて登校してきたと知った連中が「八神さーん!」と声を掛けている。
八神はそれに手を振り次第に回りに集まってくる連中らに「はいはーい。おはよう」と声を掛けている。どうやら八神はここのリーダー的存在らしい。
八神は俺の方を見て柔らかく笑った。
「送ってくれてありがとう。仕事頑張ってね」
「帰りは歩いて帰ってこいよ」
「迎えにきてくれへんの?」
「甘えるな」
顔を近づきてきた八神の頭を軽く叩いて、「じゃあな」と言い車を発車させる。ミラーに写っている八神はひらひらと俺に手を振っていた。
「お前がこんな時間とか、どうしたんだよ。」
「別に遅れた訳じゃねえだろうが」
「そうだけど、珍しいなぁって」
黒沼 命 、俺と同じ浅羽組の幹部。最近小さな子供を拾い育てている。基本面倒なことはしない奴だが、大切な人であるその子供に関してなら結構何でもするやつだと最近知った。
「最近ちゃんと家に帰ってるらしいしよ、何かあったのか?」
「…お前と一緒だ、拾い物をした」
「……ガキか?」
「まあ、高校生だ」
「女?男?」
「男。」
それを聞いて面白そうにクックッと笑った命。俺もつられるように苦笑をこぼす。
「お前がなぁ。今度会わせろよ」
「家に来ればいい」
さて、仕事をしよう。
幹部室の席に座り小さく息を吐いた。
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