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第11話
帰ってきて玄関を見れば俺のではない靴があった。あいつもう帰ってきたのか?
「…八神いるのか?」
リビングのドアを開けて中を覗く。そこに姿は無くて、どこだ?と耳を傾けていると変な音が聞こえてきた。それは寝室からで、ドアを開けるとベッドの上で八神が踞っている。
「……おい、どうした?」
「…ん…はぁ…ぁ…はぁ……ヒュッ…ぐっ…あ……」
どうやら過呼吸になっているらしい。袋を口にあてるのが良いとかいうけれどあれは本当は違うのだと誰かが言っていた。
八神を俺に凭れさせて背中を撫でる。
「おい、大丈夫だから俺と同じタイミングで呼吸しろ」
「っ…はぁッ…でけ…へん……っん、はぁ……はぁ……っあ……」
「できる。ほら吸え」
呼吸を落ち着かせていると縫るように俺のシャツを掴み涙を流す。
「ひっ……はッ…ん…っ」
「ゆっくり吐いて…吸って…」
「ん…んっ…んん、はぁぁ…」
落ち着いたようで俺に体重を全部預け脱力しきった八神をベッドに寝かせ、涙と涎で濡れた顔をタオルで拭ってやる。
「ちゃんとできただろ。」
「…う…ん、誉め、て」
「いい子だ」
「俺、高校、生やで…その誉め方、何なん…」
小さく笑う八神の髪を撫でて「何があった」と聞けば涙に濡れた目で俺を見てくる。
「助けて…」
悲痛な声に、胸が締め付けられる。
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