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第12話
助けてと言った八神は俺の服を掴み離そうとしない。これで八神が俺に縫ったのは3回目だ。
「何から助けてほしいんだ」
「全部から」
「全部って言われてもわかんねえよ、お前がちゃんと話すなら助けてやれる。」
「……俺…死ぬかもしれへん」
へらっと笑った八神はそのまま表情を崩さない。
「って言うたら信じる?」
「理由を話してくれたらな」
「ハハッ…まあ、それは嘘やねんけど。」
だろうな。とため息を吐く。
「うーん、まあまだ何も詳しくは話されへんねんけどね」
「そうかよ」
「でも、助けてほしいねん。俺に優しくしてくれるだけでいいねん。おはようとか、おやすみとか。そういう何気ない言葉が欲しいの」
八神の表情が少し暗くなった。「大丈夫だ」と言って髪を撫でてやれば、無意識に肩に入ってたらしい力をふっと抜く。
「こんなん言うてる奴が学校でリーダーして、みんなの上に立ってるのって恥ずかしいな。」
きっと自分をずっと弱いと悩んでいたんだろう。それが苦しくなって今は逃げ出したくなっているんだと思う。
「俺のこと気持ち悪いって思う…?弱いって思う…?」
「思わねえよ。」
「思わんの?俺は思うのに?」
「俺はお前じゃねえ。」
そういうと目に涙を滲ませて俺を見上げる。そうして安心したように口元を緩めた。
「…なあ…早河さん…」
「ん?」
「俺、早河さんが好き」
「……………」
それは、どういう意味だろうか。
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