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第14話
平気と言ったわりにぐったりしてる八神をベッドに戻して「無理するな」と言い布団をかけてやる。
「ん~、でも早河さんも疲れてるんやろ?……あ!そうや!うんうん。」
「何だよ」
「一緒に寝よぉ?」
首を傾げてへらっと笑う八神は腕を伸ばして俺の手首を掴む。
「ほら、布団入って」
「……仕事がある」
「そんなん後。疲れてるから帰ってきてんやろ?休まんでどうすんの」
「いや……」
「いや…とちゃうの~!そやったら、俺も寝えへん。」
バッと起き上がった八神は立ち上がってまだ少し怠そうに歩いてリビングのソファーに座る。
「八神…」
「なあなあ。早河さんって長いから他の呼び方なんかない?下の名前は?」
「……大和 」
「そぉ、大和ね。大和って呼んでええ?」
「好きにしろ」
「ふふっ、俺のことも名字じゃなくて琴音でも琴でも呼んでくれてええからさ」
八神は俺との距離を縮めようとしているのだろうか。
申し訳ないがそれは俺にとってはただ圧迫されているように感じるだけだ。今のところは普通だが、これ以上は正直難しい。
命の言葉が頭に響く。追い出す。そんなこといつもの俺なら簡単にできるはずなのに、なぜか八神だけは……
「何難しい顔してんの?」
「…いや」
「仕事すんのやろ?コーヒー淹れよか?」
「いい、お前は休んでろ」
「…もぉ…過呼吸なんて大したことないのにぃ。」
そう言いながらもソファーにゴロっと寝転んだ八神。やっぱりまだ怠いくせに。そんな姿を確認してから持って帰ってきた資料を眺めた。
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