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第16話
それから話しかけても無視を決め込む八神に、俺も面倒臭くなって話しかけようと思うことをやめた。
ここには俺一人しかいないんだと思いながら作業を続ける。
「───なあ」
作業に集中していたから八神の声なんて聞こえなくて。
「なあってば!!」
「あ?」
「何で無視すんのん…?俺が無視したから…?怒った?…ごめんなさい」
「は?無視?」
そんな事してないと言おうとして、八神を見て固まった。八神の目に涙が溜まってて驚いてしまう。
「泣くな」
「うん…泣かんからお願い。一人嫌やねん、無視しやんといて…」
「しねえから、さっさと涙引っ込めろ。」
「ん…」
服の袖で目を擦って涙を拭う。それからふんわりと笑った八神に何故だか胸がドキりとした。
って、何でドキってしてんだ。
「八神笑うな」
「え、何で?」
「いいから、一回笑うな」
そうしたらきっとこのドキドキが消えると思うから。
「でも、今笑ってなかったら泣きそう」
「…じゃあ泣け」
無理に笑わせて我慢させるのはきっと可哀想だ。顔を歪めて本格的に泣き出した八神の髪を撫でてやる。すると八神は俺に抱きついてきて俺の服を涙で濡らしていった。
「無視されて寂しくて嫌だったんなら、お前もこれから無視なんてすんじゃねえよ」
「うん、ごめん…」
何だか八神が可愛く思えてきた。
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