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第25話
と、いうわけで偽物の恋人が始まったわけだが。
「大和ぉ、ちゅーしよ、ちゅー!」
「お前なぁ…嫌な奴を遠ざける為の嘘なんだろ。何でそんなことしないといけねえんだよ。」
「そんなん聞いてないもーん。はい、ちゅー!」
肩を持たれ無理矢理振り返らされ唇が触れる。八神は嬉しそうに笑っているけれど、俺は特に何も思わなくてはぁ、と小さく息を吐いた。
「あれ、怒らんのん?」
「怒ってほしいのか」
「嫌や!」
ヘラヘラ笑って向こうに行ったかと思えば、すぐに帰ってきて今度はキスではなく首に噛みつかれる。
「…噛むな」
「うん。怒らんで。」
ギロッと睨むとさすがに反省したのかへらっと笑って謝ってくる。
「ちゅーはええの?」
「…いいってわけじゃねえけど、」
「あかんのん?」
口をむぐっと閉じるとそこをまた唇が触れる。もういいか。と頷けば「やったぁ!」と首に腕を回される。
「なあ、俺やっぱり大和のこと好き。」
「………」
「大和もさぁ、俺のこと好きになって?」
悲しそうに耳元でそう言われて、なんだか俺まで少し悲しい気持ちになって。八神が俺の肩に顔を埋める、その頭に手を置いてわしゃわしゃと撫でた。
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