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第29話
いつまでに調べろとかは特に何も言われなかったけど、早くしないともしかしたら若が不利な状況になるかもしれない。そう思って仕事より先に若の方を優先する事にした。
紙に書かれてある3つの高校、その最後の文字はやっぱりどこかで見たことがある気がする。
坂城 高等学校…
どこで見たんだっけ…?
まあいいか、と思い書かれている順に調べていく。
上2つに書かれていた高校を調べ上げて最後にと坂城高等学校を調べていた時、思わずピタリと手が止まった。心臓がバクバク、うるさくなっている。
パソコンの中、羅列された文字に八神の名前が書いてあったから。
そうだ、あいつを送った時に校門の所にその文字が書かれていた。まさか若の学校と敵対してるとは。
何故だか調べるのが苦しくなってそこで一度完全に手を止めてため息を吐いた。
若を優先しないといけないことはわかっているけれど、八神だって守ってやりたい。
…守ってやりたい?
どういう感情だよ、と苦笑を零してみたけれど、それは変わらない。
ならもう
「…若と八神に、話すしかないか」
2人に話をしても、何も変わらないかもしれないが。何もしないよりはマシだろう。
若に怒られるだろうな。そう思いながら2つの高校の分のデータを纏めて、自分の仕事に取り掛かる前に赤石を叩き起こした。
「もっと優しく起こしてよぉ」
「優しくじゃお前は起きないだろうが」
「んー…みっちゃんの優しくなら起きる!」
「聞いてねえよ」
若が学校から帰ってくるまで、少し重たい気持ちのままだった。
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