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第30話
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「で?…俺に坂城の奴らと仲良くしろって言いてえの?」
若が帰ってきて早速、調べたデータを渡し坂城高校の話をした。
「いえ、何とか争わない形にはできないかなと思っただけです。」
「ふぅ〜ん…。まあそれは坂城のリーダー次第だよな。俺は別に構わないけど、坂城は汚ねえことする奴らじゃねえし。」
「では、坂城のリーダーが争わないって言ったら…?」
「ああ、あいつらとは敵対する意味もないしな。俺らの代は一時休戦ってことで。」
「ありがとうございます」
頭を下げて少し話をしてから若の部屋を出る。
そろそろ家に帰らないといけない時間だ。急いでもう誰もいない幹部室に戻り、部屋をある程度片付けてから組を出た。
「おかえりぃ」
「…ただいま」
「お風呂洗っとってん!後は風呂自動のボタン押したらいけるで!」
「ああ、ありがとな」
「ううん、さて今日のご飯は何でしょう?お腹すいた?」
靴を脱ぎ部屋に上がる。隣をぴったり歩く八神に早く話をしなければ。
「話がある」
「え、うん。何?」
「お前、坂城高等学校のリーダーだよな?」
「そう、やけど?」
「…浅羽 晴臣さんを知ってるか。」
そう聞くとピシリと固まった八神。
「知っとるよ…?…えっと、なあ、俺の考えてること言うていい?」
「…ああ」
「浅羽晴臣は、浅羽組の若頭やねんやろ?で、大和はヤクザやん。…違うかったらごめんやけど、大和はもしかして…浅羽組の人なん?」
その言葉に頷けば八神はフッと笑った。
「そっかぁ、で?俺らのこと調べろって浅羽に言われたん?」
「ああ、けど…」
「はぁ。もー、最悪やん。大和が浅羽の後ろにおるんやったら浅羽に変に手出されへんし」
ニヒルな笑みを浮かべたままソファーに沈んだ八神。寝転んで目を閉じ目の上に腕を持って行って光を拒絶する。
「出てくわ、明日。」
「おい、ちゃんと最後まで話を聞け」
「は?何が?話聞いたってどうせ何も変わらんし、同じやろ。折角大和との生活楽しかったのにさぁ、俺の情報が浅羽に漏れるんじゃここにおられへんやん。」
話を聞こうとしない八神に腹が立ってソファーに寝転ぶ八神に股がり、目を覆う腕を掴んで両手を八神の顔の横でそれぞれ押さえつけた。
「若が…浅羽晴臣さんが、お前さえいいっていうなら一時休戦って形で、争わないようにしようとしている。」
「は?」
「俺が、頼んだ。大きなお世話かもしれないが…。お前がここに住ませてくれって言ったんだ、俺も面倒を見てやるって……今、決めた。…だから、お前のせいで苦しむ若も、若のせいで苦しむお前も見たくねえ。」
「何言うてるん…?」
「お前の情報を若に漏らしたりしない、お前がここで安心して住めるように。…約束する。」
何をムキになっているのか、わからない。
何故だか胸が熱くなって。
「や、まと…?」
「悪い、ちょっと黙れ。」
そのまま、八神にキスを落とした。
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