「あがったよ〜」 「っ、あぶねえだろ」 後ろから突然腰に腕を回し抱きついてきた八神。今包丁持ってたらどうするんだと言いたくなる。 「包丁とか、持ってへんことは確認済みです。」 「そうかよ」 そのまま、抱きついて離れない八神を離そうとするのは諦めた。 「今日は〜？仕事遅いん？」 「いつもと同じくらいだろ、多分」 「んー、ふふっ、なあなあ浅羽に一回会いに行きたいんやけど」 「若の高校まで行けばいいだろ。」 「無理無理！やから大和が間入ってさ、浅羽連れてきてくれへん？」 「…どこに」 「ここ？」 「馬鹿言うな、それならお前を若の所に連れて行ってやる」 「…それって、組の所に連れてくってこと？」 「…親父と若がいいって言ったらな」 「今日！？今日はいいって言うたら連れてってくれるん！？」 まあ、と頷くと「早よ聞いて来て！！」って携帯を持たされ、寝室に無理矢理押し入れられた。 世間的にはまだ朝早い時間だけど、親父はいつももっと早くに起きてる。 かけるか、と親父の携帯番号を連絡帳から引っ張り出して通話ボタンを押した。 「どうした」 「すみません、あの突然なんですけど…、今日今俺と一緒に住んでる八神って男をそっちに連れて行ってもいいですか。若と話があるみたいで。」 「晴臣と？」 「若と敵対してる学校のリーダー…なんですが、若も八神も無駄な喧嘩はしたくないからと言ってまして…」 「俺は別にいいけどよ、晴臣にも聞けよ。あと、変に他の奴らに見られて困るのは…その八神ってやつだ。あんまり見られないようにな」 「はい、ありがとうございます」 『 「おう、じゃあな」 通話を切って、今度は若に…と思ったけどあの人はまだ寝てるだろうな。８時回ってから連絡しよう。 そう思って寝室を出ると 「………」 「どうやった！？」 ドアの前でしゃがみこんでる八神がいた。 「親父はいいって、若はまだ起きてないと思うからあとで連絡する」 「ふぅん、寝坊助さんやな」 「……お前なんでそんなに組に行きたそうなんだ？」 「えー？だってさ！気になるやん？」 「そうかよ。…お前が組に行くことは誰にも言うなよ」 「わかったぁ」 本当にわかってんのか、と言いたくなるくらいのニコニコな笑顔。頭を撫でてやると嬉しそうにその手を掴んで頰に持っていく。 「好き」 「…ああ」 「朝ご飯、食べよ」 幸せそうに笑いやがる、その笑みが移りそうになってキュッと唇を引き結んだ。